【アニメ】アリスで始まりシンデレラで終わる『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』1話感想

2023年4月から放送のTVアニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』1話「鏡でも見ることができない自分の顔って、なに?」を観たので感想を書いていきます。

 

本作はサイコミで2016年から現在まで連載中の漫画『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』を原作とするTVアニメ。『アイドルマスター シンデレラガールズ』に登場するアイドルの中で、身長が149cm以下の年少組が所属する「第3芸能課」を中心とした物語。

ちなみに私は原作未読ですが、せっかくなので何も知らないまま観ていって、最後に改めて原作を読んで比較したりしようかなと思ってます。

 

 

冒頭は沢山の鏡と時計、そして様々な色のリボンがかかった空間。少女がふたつのリボンを手に取る。黄色いリボンはおとぎ話に出てくるような小さい扉に、白いリボンは現代風のリアルな扉に繋がっている。

ここでこの物語が子供と大人、夢と現実の間で揺れ動く人たちの物語であることを予感させます。

今回はサブタイトルにもあるように「鏡」が象徴的に何度も用いられますが、これは主人公の「橘ありす」→『不思議の国のアリス』→『鏡の国のアリス』という連想から選ばれたモチーフでしょう。今回はアイドルという「夢の世界」に入っていくお話なので、単なるダジャレではない、的確なモチーフ選びだと思います。

 

ありすの家庭は非常に裕福で、両親からも愛されているものの、共働きであるため一緒に過ごす時間が短く、孤独を感じていることが読み取れます。

ありす自身も両親を尊敬していて、両親に近づきたい、自分もその「大人の世界」に入りたいからこそ、努めて大人びた態度をしているように見えます。ただそれは元を正せば「両親と一緒にいたい」という、極めて子供らしい動機とも言えるでしょう。

 

もう1人の主人公であるプロデューサーも、見た目はともかくまだ大人になりきれていない、どちらかといえば子供に近い存在です(子供のアイドルと本気で言い合いするくらい)。

 

一方で現実の「大人の世界」は大概くたびれていて、感じ悪いし、素晴らしい場所のようには描かれていません。



なので、本作は大人になりきれないありすとプロデューサーを中心に、「大人」になるというよりも、むしろ子供らしい「夢」を追うことの輝きみたいなものを描いていくのかなと思いました。

 

こんな感じで、まず物語の導入として非常に綺麗にまとまった1話でした。アイマスのアニメとしても、初回に学校のシーンが入るところは2015年のアニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ(アニデレ)』を連想させますし、「窓際部署で燻ってたアイドル達がプロデューサーと出会い動き出す」という2011年のアニメ『アイドルマスター』を彷彿とさせる舞台立てを用いることで、実際かなり恵まれた立場でスタートしたゆえに正直カタルシスには欠けたデレアニのような事態を避けています。そういう意味では、これまでのアイマスアニメのハイブリッドであるとも言えるかもしれません。



また、作劇だけではなく作画・演出も力が入っていたので、最後に良かったシーンを羅列しておきます。

 

誰もいない家に帰ってくるありす。水槽越しのショットで孤独と息苦しさを感じさせる。

 

背後のやたら動く通行人、親子連れと子供になりきれないありす、大人になりきれないプロデューサーとの対比に見える。

 

心が動くときに風が吹くというのは定番の演出ですが、夢を語るプロデューサーに一瞬風が吹きかけるもまだなびかない、そのあとプロデューサーの輝く目を見て改めて一気に風が吹くという、タメのある演出が良かった。あとこういうときにありがちな安易な頰赤らめが無いのも良い。

アイドルの世界に一歩踏み出すときに、鏡からおとぎの世界に入っていくというまさにアリス的な演出。

シーンでは無いですがEDに流れた『よりみちリトルスター』の「この靴は この足で ぴったり履けるうちに また遊ぼうよ」という歌詞が、すぐに成長していく子供時代の刹那性がうまく表現されていて良いなと思いました。最後の「明日天気になりますように」で、靴を飛ばして天気を占う遊びの定型句ということで、いずれこの靴も脱ぐ時がくるというのを重ねて感じさせるのも良い。

 

最初と最後が寝顔で挟まれているということで、サブタイトルの「鏡でも見ることができない自分の顔って、なに?」の答えは「寝顔」なんだと思います。納得できるような納得できないような感じですが、転じて「夢を見てるときの自分」、「自分の本当の願い」に気付いてないとかそんな感じなのかも。


最後に少し気になったところをあげると、まず冒頭『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』モチーフで始まって、最後はシンデレラモチーフで終わるということで「結局どっちだよ!」とちょっと思いました。これは今後の展開でうまく組み合わされて納得できるようになるかもしれませんし、特に何も無いかもしれません。

 

あとガチ子供の薫と仁奈が、プロデューサーに対してものすごく不安そうに「いなくならないで......」と言ってるのは、アイドル以前に家庭環境とかものすごい心配になりました。

 

シンデレラガールズのアニメでは、キャラクター元々の設定だけではアイドルを目指した経緯(そもそもの動機)が分からず、ドラマが作りづらいということがあると思いますが、ありす以外のアイドルをどう掘り下げていくのかも気になるところです。

 

 

それでは今回はこの辺で。

 

消灯ですよ。