【読書】『三体』3部作(オーディブル版)感想

劉慈欣によるSF小説『三体』3部作を、様々な本を朗読で聴くことができるAmazonのサービス「audible」で聴きました。

 

日本で第1作が出版されたのは2019年(中国本土では2008年)ですが、評判が評判を呼び、現在Netflixでドラマ版が配信中です。

 

今回三体に触れたのはドラマの予習というわけではなく、単に長距離移動のお供に何かないかと探して、たまたま無料クーポンを手に入れていた「Audible」の中で見つけて、時間も長いし(1作目『三体』が17時間)ちょうどいいかと聴き始めたのがきっかけです。

 

そんな感じで何となく聴き始めたら、お話は面白いし「Audible」も聴きやすいしで一気にハマり、全3作(1冊約17時間×系5冊=85時間超)をまとめて全部聴いてしまいました。

 

まず祐仙勇さんによる朗読がとても聴きやすく、人物によってしっかり演じ分けてあるので全く混乱することがなく、スムーズに物語に没入できました(声で「あ!あの人が出てきた!」と分かる感じも楽しかったです。特にトマス・ウェイドの演技は印象的で良かった)。

また、活字で読んでいたら馴染みのない中国の名前や専門用語でつまってしまっていたかもしれませんが、その点音で聞くことでだいぶ理解しやすくなっていた気がします。

 

本作の概要は知っていたはずなのですが、聴き始めるタイミングではすっかり忘れていて、第一部のどこに向かうか分からない楽しさも十二分に味わえました。

 

第二部では羅輯の延々続く妄想デートに困惑こそしましたが、時代がポンポン飛んでいく後半につれてどんどん楽しくなり、とてもよくできた結末に「これをどうやって続けるんだ?」とまた困惑してしまいました。

 

しかしそんな困惑は全くの杞憂で、第三部のあまりに壮大なスケールかつ衝撃の展開の数々に序盤から引き込まれ、最後に至るまでめちゃくちゃ楽しく聴くことができました。全三部の中で個人的にはこの第三部が一番好き。

 

本作はSF的な奇想や三体世界の超技術の楽しさはもちろんのこと、「宇宙社会学」の考察が非常に興味深かったです。

「宇宙社会学」をベースとした「黒暗森林理論」も非常に納得度が高く、社会状況や生活環境で人々の選択は常に変わりゆくという社会心理のありようもしっかり描写されていて、壮大で荒唐無稽な話の中にも確かなリアリティを与えていたと思います。

 

そんなわけでたいへん楽しめましたし、他の劉慈欣の作品も読むなり聴くなりしてみようと思いました。傑作!

 

 

それでは今回はこの辺で。

消灯ですよ。