【MA4】MASTER ARTIST 4 第3弾(美希・あずさ・律子)レビュー

2021年2月10日『THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 4』第3弾として星井美希三浦あずさ秋月律子の3タイトルがリリースされたので、それぞれレビューしていきます。


アイマス馴染みのコンポーザーを迎え、未来へと再出発する意思を強く表明した第1弾。アイマス初参加のコンポーザーを中心に、コロナ禍の沈んだ心に寄り添うような曲を揃えた第2弾。それぞれ明確なコンセプトを感じさせるソロ新曲によって、異なる色を出してきた第1弾、第2弾に続く今回の第3弾は、これまでとまた別の流れを感じさせるものになっていました。

まず新曲のコンポーザーは、比較的馴染みの面子ではあるものの、アイマス5ブランド全てに楽曲提供経験のある三浦誠司氏、バンナムスタジオからミフメイ氏、シンデレラを中心に多数楽曲提供している滝澤俊輔氏と、バリエーション豊かな人選となっています。MA4のこれまでの流れとして、ソロ新曲のコンポーザーは「変わるもの、変わらないもの」というMA4のテーマに沿って、765ASで作曲経験がある方が1人、未経験の方が2人という構成でしたが、今回は作詞として参加経験のある三浦誠司氏(『LOVEオーダーメイド』)と、編曲はあるものの作曲は未経験のミフメイ氏と滝澤氏の少し捻った組み合わせとなっています。さらに第1弾では春香の『START!!』を作曲した宮崎誠氏が同じく春香の『I’m yours』を、第2弾では響の『天と海の島』を作曲した園田健太郎氏が同じく響の『HUG』を手がけてきましたが、今回は律子の『LOVEオーダーメイド』を作詞した三浦氏が美希の『アプデ』を手がけるなど、こちらも少し捻ってきています。

そして、第1弾・第2弾と新曲は歌詞に一貫したテーマ性を感じさせるものになっていましたが(詳しくはこちら→第1弾第2弾)、今回の第3弾はそういった一貫したテーマ性はおそらく設けられていないと思われます。代わりに、今回はカバー曲同様、新曲にキャストの意向が反映されているという特徴があります。新曲にキャストが関わるのは、既に出ている情報とテーマ性の強い第1弾・第2弾を見る限り、今回が初めてです。新曲の曲調について、第1弾はロック系、第2弾はアコースティック系が中心と、テーマ同様ある程度の方向性を感じさせるものでしたが、今回はキャストの意向が入ってるのもあってか、ディスコ調、EDM、バラードと曲調も多彩で、カバー曲含め楽曲の充実度で言えばシリーズ1と言えるでしょう。

それでは具体的な楽曲について、各タイトルごとのレビューに入ります。




07 星井美希




・『アプデ』
作詞・作曲・編曲:三浦誠司

『マリオネットの心』以降続いていた切ない路線から一転、初期の『ふるふるフューチャー』路線に回帰したような100%ラブラブ路線。MA4のテーマからは「変わるもの」を踏襲して、恋をして変化する心をスマホのアップデートに喩えた歌詞を、多幸感溢れるディスコ調の曲に乗せて歌った楽曲。

「アップデート」は元より、SNSの通知に始まり、画像フィルタ、アラーム機能に至るまで、スマホにまつわる喩えが散りばめられているのが楽しい歌詞で、全体的に細かく韻を踏んでいたり、Aメロ後半(Bメロ)の譜割が1番と2番で変わっていたりする点も、題材同様今っぽさを感じさせます。

個人的には『アマテラス』しかり、こういったディスコ調の曲が大好物なのと、美希のポップ路線の歌声も大好きだったり、前述の歌詞の楽しさもあり、MA4全体としてはもちろん、全アイマス曲のなかでも上位に来るほど好きな楽曲になりました。(そしてその『アマテラス』を手掛けた渡辺量氏がコロムビア特典の「TO D@NCE TO」で美希ソロ『私たちはずっと…でしょう?』のまさにディスコ調リミックスを手掛けていてさらに最高)


・『イジワルしないで 抱きしめてよ(オリジナル・アーティスト:Juice=Juice)
・『部屋とYシャツと私(オリジナル・アーティスト:平松愛理

イジワルしないで 抱きしめてよ』がまず素晴らしい出来で、難しいビートも完全に乗りこなしつつ、美希のカッコよさと可愛さ、そしていつもより吐息多めでセクシーさを全て兼ね備えた最高のボーカルが堪能できます。一方の『部屋とYシャツと私』は、可愛さに全振りした甘い歌声ながら、実は毒っ気の効いたその歌詞によって、甘くも油断ならない美希のキャラクター性が遺憾無く表現されています。


・『マジで…!?』作詞:BNSI(くぼけん・エトウ) 作曲:BNSI(佐藤貴文)

第2弾の真と亜美を経て、いよいよおもしろ『マジで…!?』選手権が本格的に始まってしまったようです。美希もまず絶対ヤバくなさそうな「ヤバイかも?」から始まるものの、そこからサビ終わりの「マジでヤバい!」がどんどんヤバそうになっていくのが面白い。イメージとしては、余裕→律子に見つかる→捕まる→説教2時間経過といった感じで、想像力を掻き立てられる楽しい仕上がりになっています。

・『New Me continued』作詞:八城雄太 作曲:俊龍 編曲:Sizuk

ここまでが比較的可愛さをメインにしたボーカルだった分、この曲の落ち着いた美希の歌声は、単に成長というよりも、大人になった美希のように感じられ、歌詞から来るものとはまた別の感慨が得られると思います。



08 三浦あずさ




・『VELVET QUIET』作詞・作曲・編曲:BNSI(ミフメイ)

一聴して「TO D@NCE TO」のリミックス楽曲かと思うような、ゴリゴリのEDM楽曲で、楽曲を手掛けているのもまさにMA4第2弾特典の「TO D@NCE TO」で『ラムネ色 青春』のリミックスを手掛けたミフメイ氏。「変わらないもの」=本質・本能を求めて、ベルベットのように深い色の内面世界を漂うような歌詞になっています。ちょうどミリオンのあずささんソロ『嘆きのFRACTION』と静と動で対になるような内容とも言えるでしょう。


・『人生は夢だらけ』(オリジナル・アーティスト:椎名林檎
・『糸』(オリジナル・アーティスト:中島みゆき

智秋さんがリクエストの多かった2曲を採用したという今回のカバー(1位が『糸』2位が『人生は夢だらけ』)。今作のあずささんは、キャラクターとしての制度を保ったまま、たかはし智秋のスキルを存分に振るっているという印象で、そのスキルが存分に発揮されているのが『人生は夢だらけ』です。「一息で歌いきった」という、そのライブ感溢れる歌唱で、歌のゴールにたどり着いたときには、拍手を送りたくなるような感動を覚えます。途中そのスキルから椎名林檎に接近する瞬間も聴きどころ。一方の『糸』は、逆にスキルは抑えめのあずささん感を全開にした歌唱で、優しさや暖かさを強く感じられます。


・『マジで…!?』

おそらく本人はマジでヤバいと感じているものの、側から見れば全然ヤバそうに聴こえない「ヤバいかも?」に始まり、要所要所できっちりバリエーションを入れていて、キャラクター的にそこまで遊ばなくても問題ないあずささんでさえコレですから、いよいよおもしろ『マジで…!?』選手権が始まってしまったと、改めて実感させられます。


・『New Me continued』

この曲では、あずささんの美声を存分に堪能できます。さらに、前述のスキルも要所要所で発揮されており、演歌的な情感さえ感じさせる歌唱で、「歌声そのものに感動する」という感覚が味わえます。第3弾ではこのあずさverが個人的に一押し。



09 秋月律子




・『灯(あかし) 』作詞:Mitsu(TRYTONELABO) 作曲・編曲:滝澤俊輔(TRYTONELABO)

THE IDOLM@STER MUSIC ON THE RADIO」108回の律子役の若林直美さんのトークからインスパイアを受けて制作された楽曲。「はじめは小さかった灯火が徐々に増えていき、次第に世界が広がっていく」という話から、画の見える美しい歌詞に落とし込まれています。紆余曲折あった律子の道のりを、これまで灯してきた「灯」というビジュアルを用いて描いているように読める歌詞で、「灯の海」という美しい景色や、「思いの全てが “私”に変わる」という言葉で、色々あったその道のりを全て肯定すしていく様が感じられます。まさに「灯」と言えるようなサイリウムの海の中で歌うイメージが見える曲もあるので、ライブでの歌唱が待たれます。


・『POP STAR』(オリジナル・アーティスト:平井堅
・『My Sweet Darlin' 』(オリジナル・アーティスト:矢井田瞳

若林さんが「『魔法をかけて!』のアンサーソング」と語る『POP STAR』も、『My Sweet Darlin' 』も、どちらもこれまでの律子のイメージを踏襲しつつ成長を感じさせるような楽曲で、新曲『灯(あかし) 』の制作の経緯を含め、若林「神」の的確なセルフプロデュース力を再確認させられます。


・『マジで…!?』

ここまで「これからの律子」を感じさせる新曲、「これまでの律子」を感じさせるカバーと来て、この『マジで…!?』では「ライブでの律子」を感じられる1曲になっています。1番は比較的大人しく歌い、2番からはっちゃける様子は、まさにライブでの若林さん=律子ですし、2番終わりには明らかに疲れている→落ちサビ直前に息を整える音が入っていることや、最後のサビ「天晴れ!」でエフェクトがかかっているなど、これまでには全くなかったギミックが入っていて、非常に楽しい仕上がりになっています。


・『New Me continued』

「これからの律子」「これまでの律子」「ライブでの律子」と、多角的かつ的確に律子を表現してきて、「これからの765プロ」を感じさせるこの曲で締めるという、律子のソロCDとしてこれ以上ないほど完璧な構成と言えるでしょう。繰り返しにはなりますが、今回のMA4で若林さんの「プロデューサー」としてのガチさを再確認しました。



第1弾からホップ・ステップ・ジャンプといった具合に、今回の第3弾は楽曲の充実度、全体から感じる熱量共にシリーズ最高だったと思います。毎回じっくり時間をかけて作っていることが完全に良い方に出ていて(律子の『灯(あかし) 』などは、この制作スケジュールでなければ絶対出てこなかった訳ですし)、次の第4弾への期待がますます高まりました。

やはりこうしてキャラクターひとりひとり、ひいては765AS全体についてしっかり考えてものを作ってくれているのを感じるのは非常に嬉しいですし、パフォーマンスとしても、後輩ブランドのアイドルでは絶対に出せない、時間と経験の乗った豊かなキャラクター表現を全てのアイドルが見せてくれていて、まだまだ可能性が開かれているのを感じます。

とりあえず今回の美希はまだしばらくリピートすることになると思います。



それではこの辺で。


消灯ですよ。