【MA4】MASTER ARTIST 4 第2弾(真・響・亜美)レビュー

2020年11月11日『THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 4』第2弾として菊地真我那覇響双海真美の3タイトルがリリースされたので、それぞれレビューしていきます。

「これまでの年月を踏まえながらも、新たなスタートを切って未来に向かおう。変わっていこう」という強い意志を感じさせるものの、新曲のコンポーザーは割と見知った顔ばかりだったりして、新しさを感じることは少なかった第1弾でしたが、第2弾ではまた方向性をガラッと変えてきました。

まずソロ新曲のコンポーザー。3人中2人は765ASソロ曲初提供だったものの、アイマス全体としては全員見知った名前だった第1弾と比べ、今回の第2弾では3人中2人が75ASソロ曲初提供という構成は同じものの、初提供の2人(『Ever Sunny』の中村氏、『ポジティブシンカー!』の網本氏)はアイマスへの曲提供自体初めてであり、響の新曲『HUG』の園田氏もアイマス提供曲はシンデレラ含め3曲と少なく(内1曲は「園田智也」名義でのぷちます2期の響曲『天と海の島』)、顔ぶれとしてはかなり新鮮な印象があります。

(ちなみにこのままの流れで行くなら、ソロ新曲のコンポーザーの3人中1人は既にそのアイドルのソロ曲を提供したことがある人、残りの2人は765ASへ初提供の人という構成になっていきそうです。これは、MA4第2弾発売記念生放送で沼倉さんが「MA4全体のテーマは“変わるもの、変わらないもの”」と語っていましたが、コンポーザーもそのテーマに基づいて選ばれているのではないかと思います。)

また、第1弾はMA4全体のテーマ「変わるもの、変わらないもの」に加え、ソロ新曲及び『New Me, Continued』の全ての歌詞で「再出発」を感じさせるものになっていましたが、第2弾ではその点も変わっていて、今回のソロ新曲は全て「ままならない日々の中で沈んだ心」に向けた歌詞になっていると言えると思います。「再出発」というテーマは今回改めてMA4を出すにあたっての決意表明と言えるでしょうが、第2弾のそれは、やはりコロナ禍の現在の状況を意識したものと思われます。

発表されてから割とじっくり作っている印象が強いMA4ですが、第1弾・第2弾としっかり何を伝えるべきか考えられている(であろう)様子を見るだに、ただ無駄にゆっくり作っているわけではないようで、そこは信頼できるところです。

第2弾全体の印象としてはこのようなところにしておいて、これらの前提を踏まえて各タイトルのレビューに入っていきます。




04 菊地真




・『Ever Sunny』作詞:花衣(SUPA LOVE) 作曲・編曲:中村瑛彦(SUPA LOVE)

『自転車』と『チアリングレター』のちょうど間ぐらいの印象の、爽やかなミドルバラード。「今は沈んで曇り空のような心も、未来では晴れ渡った空が果てなく広がっているよ」と、優しく寄り添い元気付けてくれるこの曲は、タイトルからしてそうではありますが「変わるもの、変わらないもの」というMA4のテーマ中で「変わらないもの」に沿った曲と言えるでしょう。

ただ真のソロ曲としてはなかなか珍しく変わっているラインで、初のソロ『迷走Mind』から今回の1つ前のソロ『絶険、あるいは逃げられぬ恋』に至るまで、たとえ恋愛モチーフの曲であっても、割と自身の感情の揺れ動きを描いた曲がほとんどだったので、今回ほど徹底して相手に寄り添い語りかけるようなアプローチは新境地と言えると思います。(ちなみにMA4のソロ新曲は今のところどのアイドルも全て誰か特定の相手へ向けた要素を含む歌詞になっています)


・『愛のうた』(オリジナル・アーティスト:倖田來未
・『ロマンティック 浮かれモード(オリジナル・アーティスト:藤本美貴

MA4ではキャストの方がカバー選曲に関わっていると言う面白さがありますが、発売記念生放送での平田さんの発言を聞く限り、平田さんは今回のカバー選曲にはあまり関わっていないと思われます。「仕事は頂いたのをきっちりやるスタイル」というようなこともおっしゃっていましたし、それはそれでまたらしさが感じられて良いところです。

まず『愛のうた』はシリアスな曲というのもあり、どちらかといえばクール・イケメン寄りの歌声なのですが、振り切りすぎず柔らかなニュアンスも残した絶妙な歌唱が味わえます。そして一方の『ロマンティック 浮かれモード』では可愛さ成分多めの楽しげな歌声なのですが、その後ろでイケメンの真が「オーイェー」とか「ヨーヨー!」とか合いの手を入れてくるので、そのギャップでかなり面白い感じになっています。

ところでこの『ロマンティック 浮かれモード』の原曲は、いわゆる「オタ芸」を打つ際の定番曲となっており、万が一この真のカバーをライブで披露するとなったときに「SAY!きーくーち!マコティー!」とか「マコ様マコ様お仕置きキボンヌ!」みたいな味わい深いコールが会場に響き渡る場面が見たくないといえば、それは全くの嘘になります。

参考動画↓



・『マジで…!?』作詞:BNSI(くぼけん・エトウ) 作曲:BNSI(佐藤貴文)

おもしろ『マジで…!?』選手権は無駄にセクシーすぎる貴音の独走かと思っていたのですが、まさかのダークホース・真がやってくれました。西部警察をイメージしたという冒頭の「MAGIC DAY…!? yeah bye com’on」以外、試聴にもある1番まではまだ普通なのですが、2番のサビあたりから段々と様子がおかしくなっていきます。Dメロ冒頭「ah ah…」は平田さん自身が「男かと思った」と語るほど異常なイケボで入ってきて、そこからやたら力んだ「MAGIC CHOOSE POWER」であったり、急に入ってくるコブシであったり、「え?バトルしながら歌ってるの?」と思ってしまうほどのやりたい放題が展開されます。オチの「CONTINUE?」でもしっかり笑わせてくれますし、この真の『マジで…!?』にはマジで第2弾で1番の驚きがありました。


・『New Me, Continued』作詞:八城雄太 作曲:俊龍 編曲:Sizuk

真は可愛い/カッコいいの軸で語られることが多いですが、この曲での真の歌声は第3の魅力「色気」が爆発しています。少女でも、少年でもなく「女性」を感じさせる歌声を感じる機会は、近年じわじわ増えてきてはいたのですが、それが今回この曲で結実していて、また新たな境地を開いたのではないかと思います。



05 我那覇響




・『HUG』作詞・作曲・編曲:園田健太郎

真と同様ミドルバラードなこの曲ですが、歌詞の内容はかなり対照的になっています。「未来はずっと晴れだよ」と元気付けてくれる『Ever Sunny』に対し、この『HUG』は「うまくいく事ばかりじゃないし、平気じゃない時もある。でもだからこそ、この幸せな瞬間は特別で何よりも尊いんだ」と歌います。日々の浮き沈みという「変化」をも肯定して抱きとめるという、非常に地に足のついた大人な歌詞になっており、響の成長を強く感じられる一曲になっていると思います。

ところで今回のMA4のソロ新曲は「MASTER PRIMAL」シリーズのジャンル分けを下敷きにしているのではと第1弾を聴いて予想を立てています。今回真と響はミッドバラードで『ブルウ・スタア』のようなハウスではありませんでしたが、どちらかといえば『ブルウ・スタア』のアコースティックみを取り出した結果が今回だったのではと思います。方向性として、真と響が同じ、やよいと後述の亜美も打ち込み系で同じということで、この説もまだ生きていると言えるでしょう。ただ、そこに囚われるばかりでもないということも分かって、今回少し安心しました。(第1弾が割とそのままだったので)


・『海の声(オリジナル・アーティスト:浦島太郎(桐谷健太))
・『ECHO』(オリジナル・アーティスト:Little Glee Monster

響に『海の声』なんて安直じゃない?なんて、それこそ安直に思ってしまいそうですが、その曲を響が歌っているシーンをしっかり想定して、どういう表現ができるだろうと考えた上での選曲だと沼倉さんの口から聞けば、この選曲にもより深みが感じられるというあたり、やはり選曲にキャストが関わっているからこそでしょう(正確には沼倉さんが絞ったリストの中から選ばれたということらしいですが)。『ECHO』に関しては、コーラス含めたボーカルの質感がなかなか新鮮で今っぽく、この感じが出せるのであれば最新のトレンドを見据えた楽曲も全然いけそうですし、色々幅が広がりそうでワクワクしました。


・『マジで…!?』

おもしろ『マジで…!?』選手権などと冗談半分に言ってしまうほど楽しいこの曲ですが、響の歌唱に感じた感想は何よりもまず「歌が上手い」です。淀みなくグルーヴィーな歌唱や、心地のいい高音の抜け感など、その歌に聴き惚れているうちに「あれ?この曲ってすごいかっこいい曲なんじゃない?」と思わされてしまいました。


・『New Me, Continued』

響の歌にエモを感じる瞬間というのが時々あって、それは特にライブで感じることが多く、そこには沼倉さんの表情からの印象なども多分にあったりするのですが、それは『初恋 〜一章 片想いの桜〜』であるとか『まっすぐ』等で感じられたりします。この響の『New Me, Continued』では、そういったエモい響がかなりの高濃度で詰まっており、かなりしっとりと聞くことができると思います。



06 双海真美




・『ポジティブシンカー!』作詞:澤田空海理 作曲・編曲:網本ナオノブ

亜美がネガティブな考えを片っ端からポジティブな考えに変えてくれるこの曲は、亜美ソロの集大成的な曲と言えると思います。歌詞全体の中身としてはMA2の『YOU往MY進!』にかなり近いですし、タイトルからは『ポジティブ!』を連想させ、サビ冒頭のタタッタ(走って)というリズムはMA3『トリプルAngel』(パパッと)を思わせます。今回の第2弾ソロは全員コロナ禍を意識した歌詞になっており(多分)、2011年の震災を意識してmftさんが歌詞を書いた『YOU往MY進!』と通じる点があるのも必然と言えるでしょう。ただ『YOU往MY進!』と比べて今回の『ポジティブシンカー!』は、亜美のいたずらっ気などは出さず、徹底して応援歌となっており、その変化から成長を感じることもできるでしょう。


・『DIVE TO WORLD』(オリジナル・アーティスト:CHERRYBLOSSOM)
・『MONSTER DANCE』(オリジナル・アーティスト:KEYTALK

どちらも手数が非常に多いこの2曲。この濃い曲でキャラクターを表現すること自体、なかなか大変なことですが、その上でさらに『DIVE TO WORLD』では爽やかな可愛さを、『MONSTER DANCE』では存分に遊びを表現した歌になっており、下田さんのテクニックが存分に発揮されたカバーになったと思います。

↓下田さんが「選曲の決め手」と語った『MONSTER DANCE』のMV



・『マジで…!?』


遊びどころしかないこの曲を亜美が歌うとなれば、楽しくならないわけがありません。本当に常に手を替え品を替え遊びをふんだんに盛り込んで歌っているのですが、特に何度も繰り返されるフレーズ「MAGIC CHOOSE POWER」「MAGIC DAY YEAH BYE!」は一回も同じ言い方をしてないほどで、その引き出しの多さとエンターティナーぶりにはもはや感嘆することしきりです。そしてやはり気になってしまう真美の歌唱ですが、下田さんならそちらでもキッチリやってくれるでしょう。


・『New Me, Continued』

『ポジティブシンカー!』から『マジで…!?』に至るまで、遊びまくりのやりたい放題やってきて、そこまでで聴きどころも十二分にありますが、今回のMA4亜美盤の白眉はこの曲といっても過言ではないでしょう。そこまで散々やりたい放題やってきた分、ストレートな可愛さでもって歌う『New Me, Continued』がまあ沁みる。特にBメロの「ずっと ずっと そこにいたかったよっ」「でもね でもね やっぱ進まなくちゃっ」とスタッカートの効いた歌い方などは本当に可愛らしくて、ギャップの破壊力が堪能できます。最後にこの曲があることで、1枚のCDとしての完成度が飛躍的に上がったと思います。



第1弾が手堅くまとまっていた分、今回の第2弾が座組みも新鮮なものになり、第1弾とはまた違ったメッセージを発しようとしている姿勢も見えて、今後の第3弾・第4弾への期待がかなり高まりました。

特にソロ新曲のコンポーザーなどは、第1弾が比較的見知ったメンツ、第2弾が初参加多めときたので、第3弾はバンナムサウンドチーム、第4弾は外で名が売れてる人を連れてくるとか、もしくは普段ミリオンで書いてる人を連れてくるとか、そういった人選に対する楽しみが増えました。第1弾からの印象で、その辺はやっぱ手堅くまとまっていくのかなあと思っていたので。

第3弾は美希・あずさ・律子ということで、「MASTER PRIMAL」下敷き説からするとポップス曲多めになりそうで楽しみではあるのですが、残る第4弾で個人的にカバーリクエストに自信がある(採用されてほしい)アイドルベスト4がそっくりそのまま控えているので、今から気が気でなかったりもします。




それではこの辺で。



消灯ですよ。