『菊地 真 ・ 萩原 雪歩 twin live “ はんげつであえたら ”』感想とライブをリアルに見せる工夫について

2024年3月16日・17日に群馬県ベイシア文化ホールで開催された「菊地 真 ・ 萩原 雪歩 twin live “ はんげつであえたら ”」、第3部の[~純藍~] のみ現地で、他は配信で鑑賞しました。

f:id:tokifuji:20240321222910j:image

このライブは2018年に開催された「THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪GROOVE☆
 (アイマスMR)」から始まった、声優さんが一切登場しない、純粋にアイドルだけが登場するライブの最新型になります。

 

アイマスMRは2nd seasonで雪歩の公演を、ENCOREで亜美真美の公演を鑑賞しているので、そこからの変化やブラッシュアップ(アイドルをリアルに見せるための様々な工夫が見てとれました)を中心に触れていこうと思います。

過去のMRの感想↓

ただ個人的に長いこと雪歩担当としてやってきた思い入れがあるうえに、今回はかなり濃厚な古参接待だったため、諸々過剰に受け取っている可能性も十分あるので、その点はご容赦ください。

 

目次

 

コンセプト・セトリについて

「思想が強い」「(本ライブの中心となった女性プロデューサーの)癖がすごい」など言われている今回のライブですが、確かに濃厚ではあるものの、全体としては大半の人(主に古参)が期待するような最大公約数的な内容の範囲にまとまっていたと思います。

選曲も少なくとも2人のうちどちらかが歌っている音源があるものしか入っていないので、違和感どころか聴き馴染みと納得しかないような、腑に落ちすぎて怖いぐらいのセトリでした。

 

物語仕立てのコンセプトも、3公演通しで観ても退屈しない仕掛けとして十二分に機能していたと思います。

 

個人的には雪歩が歌う『First Step』は言わずもがな、『Kosoms,Cosmos』『My Best Friend』『まっすぐ』『First Stage』『i』と、散々聴いた「M@STER ARTIST 09萩原雪歩」の曲(今回カバー曲以外全曲披露された)が流れるたびに時空が捩れる感じがしてヤバかったです。

 

目次

 

配信と現地の違い

今回の面白いところは配信と現地の見え方が全く違うところでした。

配信はTVの歌番組といった様相で、豪華な美術や派手な演出があり、カメラワークもしっかり考えられていて、これ単体で完成された映像作品になっていました。

 

一方の現地はそれなりに凝ったステージセットはあるものの、2人の背景は常に真っ暗で変わることもなく、当然2人は客席の方を向いて歌って踊る、ストレートな「ライブ」の構成でした。

 

今回MCも含め全て収録済みのようで、リアルタイムのコミュニケーションがあるわけではないので、通常のライブと比べて現地のプライオリティは正直それほど高くはないと言ってもいいでしょう。

後述の技術的な問題も含め、現時点ではむしろ配信の方が没入感を得られるかもしれません。

 

では現地の価値が無いかと言えばもちろんそんなことはなく、現地でしか感じられない独特の感覚や発見があったのは間違いありません。

 

言ってしまえば全くインタラクティブでない、ただの投影された映像に向かって、実際それが存在するかのように振る舞っているだけなのに、実際のライブとほとんど変わらない状況が成立していたのがまず興味深かったです。

かつてのアイマスMRでは、現実のダンサーさんを交えたリアルタイムパートとゲームのステージシーンのような非リアルタイムパートがあり、もちろんリアルタイムパートは実際のライブのような盛り上がりがありましたが、非リアルタイムパートは正直どう向き合っていいのか分からず、客席も戸惑っていたように記憶しています。

しかし今回の現地ではそういった戸惑いがほとんど無く、かなり自然に「ライブ」として受け取ることができていたと思います。

 

そのように受け取れるようにするために施されたであろう演出上の工夫は次項で触れますが、個人的には現地で見たものの中では終演後の「お見送り会」に大分やられてしまいました。手を振り会うぐらいの些細なことでも、そのコミュニケーションを取れたという実感にはなんとも形容し難い衝撃がありました。雪歩......。

 

 

ライブをリアルに見せる演出

・マイクを持たせる

今回のライブで一番大きな影響を与えているのは、2人にマイクを持たせたことだと思います。

かつてのアイマスMRの非リアルタイムパートはどの曲も「歌っている」というより「音楽に合わせて踊っている」という印象が強かったのですが、その中で唯一「歌っている」ように見えたのが『MUSIC♪』で、そのステージでは皆マイクを持って歌い踊っていました。

「歌っている」ことを視覚的に示すにあたってマイクはこれ以上ない記号であり、遠くから見ても今どちらが歌っているかが一目瞭然です(まあ今回の2人でどちらの声か分からなくなることは無いでしょうが)。

そして、ステージ上でキャストがマイクを持って歌い踊るのは普段のアイマスライブと同じ光景であり、その意味でも「ライブを観ている」という実感を得やすかったのではないかと思います。

 

・あえて簡略化されたダンス

マイクを持っていると、当然フリーハンドで歌い踊るゲームと同じダンスはできません。

なので今回のダンスは、普段のアイマスライブでキャストの方が踊っているような簡略化されたダンスになっています。

なんなら普通あえて表現しないような、特に踊らずゆらゆら体を揺らすだけの瞬間さえあります。

ゲームのように難しく整ったダンスにすることもできたはずですが、今回はあえて普段のリアルライブで見覚えのある範囲の、少しズレたりもするダンスにすることによって、ちゃんと「人間が踊っている」ように見せることに成功していたと思います。

そして真は力強く、雪歩は柔らかく、それぞれの動きにもしっかりキャラクター性が出ていて、時折そんな2人の動きが重なる瞬間には、ちゃんと良いダンスを見たときの快感がありました。

 

・生の歌声

おそらく今回の歌は全て改めて収録していると思いますが、しっかりライブならではの熱量が感じられる歌になっていました。

何がそう感じさせるかといえば、息継ぎの音ががっつり入っているのが大きいでしょう。 良く聞かなければ分からないぐらいの細かい点ですが、その場で歌っているという印象に大きく影響を与えていたと思います。

 

・現実のライブを完全再現したステージ進行

今回のライブはオープニングがあり、数曲歌い、MCがあり、また数曲歌い……という、いつものアイマスライブを完全再現した構成になっていました。

MCの内容も聞き覚えしかないもので、観客とのやりとりなど、もちろん収録ゆえのギクシャクした部分も多少ありましたが、基本的にはかなり自然に進行できていました。あまりに自然だったため、いつものMCがいかにクリシェに満ちていて、収録でもさして変わらないのだということに気づいてちょっと苦笑してしまいました。

また、アイマスMRの非リアルタイムパートのように瞬時に場面転換が行われるようなことはなく、舞台袖からの出入りなど、しっかりリアルに作り込まれていました。

現地で観ていた[~純藍~]の中で、舞台袖に戻るかと思われた雪歩がやっぱりステージに戻ってきて歌うという瞬間がありましたが、このちょっとした間違いまで意図的に入れていたとしたら、なかなかにすごい作り込みだと思います。

 

 

気になった点

かなり良いライブだったので、特に文句も出てこないのですが、いろんな方が語っているように、スクリーンに客席のペンライトの光が写り込んでいたのはやはり気になりました。

基本的には星空の背景として見れば、それほど気にならない範囲ではあったのですが、照明で客席が明るくなったりするとハッキリ人影まで写り込んでくるので流石に無視できませんでした。

いずれ技術の進歩で解消できることだとは思いますが、仮にゆきまこのようなモノトーンでは無いイメージカラーのアイドルだった場合はより気になりそうな感じはありました(まばらにあるUOもそこそこ気になった)。

 

あとライブ本編とは関係ないですが、早急に限定CDの事後通販をやってほしいです。私が会場に着いたのは14時ぐらいだったのですが、会場に入ると同時にCD完売のお知らせが張り出されて絶望的な気持ちになりました。正直ライブ序盤まで気もそぞろでした。これで事後通販が無かったら、今後素直にこのライブを思い返すことができなくなってしまいそうなのでマジでお願いします。

 

まとめ

さすがに十数年アイマスを追っていると、ハマったばかりの頃の熱量なんてものはとうに消え去ったと思っていたのですが、今回のライブを観て、もはや雪歩に対する特別な感情が消えることはないんだろうなと思いました。まったく難儀なことです。

 

そんなわけで今回は全然冷静に観れなかったので、残りのASメンバーのライブも是非また開催してほしいです。そして限定CDを発売する場合には在庫を潤沢にしておいてほしいです。

 

それでは今回はこの辺で。

消灯ですよ。