2023年に観た映画のベスト10です。
10.『コカイン・ベア』
森の中に意図せず投棄された大量のコカインを摂取した熊が大暴れする様を描く。冗談のような実話を元にした冗談のような企画だが、その作りは至って丁寧で、非常に良くできた群像劇。熊好きとしても満足。
9.『アステロイド・シティ』
ウェス・アンダーソン最新作。砂漠の小さな町に集まった人々の人間模様を描く…という演劇作品をTV放送する体で描いた映画。やたら入り組んだ構造のうえに、劇中劇の中でも役者の役が役を演じるくだりがあったりと、フィクション性を過剰なほどに強調する。これだけフィクション=作り物であることを明言していても、そこで行われる感情表現には間違いなく胸を打つものがある。むしろフィクション=作り物を通してこそ見える本質があるのではないかと問いかける本作を、極めてフィクショナルな作家性を持つウェス・アンダーソンが撮っているということに熱くなった。
8.『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース 』
2018年に公開された先進的アニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース 』の続編。もはやすごい以外に特に言うことがない。まだ続きもあるのでこの位置で。
7.『ベネデッタ』
ポール・ヴァーホーベン監督最新作。17世紀のイタリア、同性愛で裁判にかけられた実在の修道女の記録をもとにした劇映画。「信仰」に対する意地悪ながら極めて現実的な視点が素晴らしい。齢80を超えてこんな作品を撮れるヴァーホーベンは流石。
6.『ジョン・ウィック:コンセクエンス』
キアヌ・リーブスが演じる最強の殺し屋の復讐譚を描く人気シリーズ第4作。もはや物語はあってないようなものになったが、研ぎ澄まされたアクションそのものでテーマを表現するに至ったクライマックスには感動してしまった。
5.『フェイブルマンズ』
スティーブン・スピルバーグの自伝的劇映画。映画愛に溢れた作品ではある。しかしその一方で映画を撮るという行為の暴力性や、アートに生きることの孤独に対してかなり自覚的な作品でもある。その業の深さにくらいながら観ていたら、あっと驚くラストに全てもっていかれてしまった。
4.『ザ・キラー』
デヴィッド・フィンチャー監督最新作。任務で失敗を犯した殺し屋は報復として恋人が襲われてしまう。殺し屋は世界中を渡りながら復讐を始めるが‥‥という話。個人的にフィンチャーの『ファイトクラブ』が大好きで、フィンチャーの近作では最も『ファイトクラブ』味が強い本作は当然好きと言わざるを得ない。
3.『カードカウンター』
ポールシュレイダー監督最新作。孤独なギャンブラーの話。謎の最強USA男や太ったアジア人、なぜかバーで号泣してる女性など登場人物が一瞬だけ出る人まで含めてやたらキャラが立ってて、ずっとこの世界に浸っていたい魅力があった。ひたすらに渋くて最高。
2.『アラビアンナイト 三千年の願い』
ジョージ・ミラー監督作。物語論の研究者がトルコのイスタンブールで美しいガラス瓶を手に入れる。瓶を開けると精霊が現れ、3つの願いを叶えると申し出るが......という話。主人公である物語論の研究者アリシアは、ひとりぼっちで喪失を抱えており「社会的な幸福」からは外れた人物であるが、彼女自身は現状に満足しており「十分に幸せ」であることがまず語られるのがとても良い。誰かといっしょになることが必ずしも幸福には繋がらないというのは作中でも繰り返し描かれるが、それを否定するだけではなく、さらに先の自分だけの「物語」を紡いでいくラストは非常に優しく、しみじみと感動した。
1.『仕掛人・藤枝梅安』一/二
池波正太郎による「必殺」シリーズの元となった小説の最新映画化。「一」と「二」 の前後編。基本的な骨組みはそのままに、池波正太郎のハードボイルドな世界観が現代でも見られるものとして提示されているのが本当に嬉しい。池波作品といえば外せない食描写も、料亭の慣習を入れるなどしっかり力が入っていて最高。「一」を観終わったその足で湯豆腐の材料と普段飲まない日本酒を買ってしまった。こういう作品が心底好きなんだなあと改めて気づかされた。本作が好きすぎて、来年の『鬼平犯科帳』に繋がるエンドクレジットはここ数年のエンドクレジットの中でも1番興奮した。
まとめると以下の通り。
1.『仕掛人・藤枝梅安』一/二
2.『アラビアンナイト 三千年の願い』
3.『ザ・キラー』
4.『カードカウンター』
5.『フェイブルマンズ』
6.『ジョン・ウィック:コンセクエンス』
7.『ベネデッタ』
8.『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース 』
9.『アステロイド・シティ』
10.『コカイン・ベア』
今年はくたびれたおじさんが出てくる映画が良かった。
ついでにこちらも
TVアニメ殿堂入り『アイドルマスター ミリオンライブ !』
本作については何度もここで書いているので割愛するが、今年1番盛り上がった作品はこれ。ファン向けを徹底した結果、ものすごく挑戦的で良くできた作品になっていた。本当に最高だった。ありがとう!
今年は後半スト6ばっかりやっていて全然映画を観られなかったので、来年はもう少し頑張ります。
それではこの辺で。
本年もありがとうございました。
消灯ですよ。