アイドルマスター「シャイニーカラーズ」について

アイドルマスターシリーズ新作「シャイニーカラーズ」が発表されました。



新しい展開それ自体は非常にありがたいことではあります。停滞したコンテンツは消えていくだけであり、実際アイマスは常に「新しいこと」をやり続けてきたからこそ、10年を越えて生き残ってきた面は大いにあるでしょう。そもそものスタートが「タッチパネル搭載の公開ギャルゲー」という他に類を見ないものでしたし、そこからフォーマットを移したり、キャラを増やしたり、ライバルを出してみたり、男キャラを出してみたり、チームを増やしたりと、手を替え品を替え新しいことに挑戦してきました。その全てが上手くいったとは言えないですが、賛否がどちらにせよ「新しいことをしよう!」「前へ進もう!」という意思に関しては一貫していたように思えます。

そして今回の「シャイニーカラーズ」もそういった「挑戦」の一つ......と本当に言えるのでしょうか?確かに新しい展開ではあります。振り返ればこれまでもアイマスは新たなチームを作ることで、新しい展開を様々見せてきました。「ディアリースターズ(876)」は新しいチームを中心に作ることそれ自体が新しく、「シンデレラガールズ」は目新しい変なキャラが大量に出てきました。「ミリオンライブ」は765の後輩ポジションとして、ASの新たな可能性を開き、レーベルを変えることでそれまでとは違う楽曲群も生まれました。「SideM」は男性版アイマスシーンを開拓し、「理由あってアイドル」といったコンセプトやユニット固定というのも新鮮でした。また、新しいチームは完全新規層や「アイマスは知っているが今更入りづらい」といった層の受け皿になり、アイマスシーンの規模を大きく拡張しました。

その点で言えば、「シャイニーカラーズ」も同様に新たな層の受け皿となることでしょう。また、声優に新人の方が多いといったところも、長く続けるには都合が良いでしょう。しかし「新チーム」であることそれ以外に、他のチームのような新しいところがあったでしょうか?2Dイラストのまま動くというのは新鮮でした。しかしそれ以外は?事務所はどこかで見たようなガラスにテープで、キャラも「(他チーム)で言う〇〇」で説明できる子ばかり。女子版でユニット固定はありませんでしたが、マイナーチェンジの範囲を出ません。レーベルもランティスで、曲も見知った作り手のものが多くまた「ミリオンっぽい」「SideMっぽい」、ひいては「ランティスっぽい」といった枠をはみ出るものではありませんでした。ゲーム性についても、初期アイマスのアップデート版といった様相で、目新しさはありません(初期のゲーム性の実現は望む人も多く、比較的好意的に受け入れられているようでしたが)。発表の中でも「アイマスらしさ」というワードをやたらと強調していましたが、それが「これまでのアイマスにあった要素」と言うなら、確かに「アイマスらしい」作品かもしれません。

「同じような事務所」で「同じようなアイドル」と「同じようなゲーム性」の中で新規ユーザーがプレイすれば、確かに「アイマス的なもの」を追体験することは可能かもしれません。そしてそれを繰り返せば、ビジネスとしては安泰かもしれません。しかしそれだけです。そこにこれまでアイマスが行ってきた「新しいことをしよう!」という意思は無く、パッケージを変えて「新発売」を謳う駄菓子のようなものです。そうして同じものを出し続けることに意義があるものもありますが、ことアイマスにおいては、これまでと全く間逆の姿勢と言えます。表面上の「アイマスっぽさ」はありますが、本質としての「アイマスらしさ」をどこまで真剣に考えていたのか甚だ疑問です。せっかく新しいことに挑戦できる基盤があるのに、なぜそれまでの焼き直しみたいなものを作るのでしょう?

まだ情報が出きっていない時点ですので、今後ここまで書いた話が全部ひっくり返ることもあるでしょう。また、続けていくことで見えてくることもあるでしょう。しかし、少なくともこの時点では、新規ユーザーを獲得するためだけに作られた「アイマスっぽいもの」としか思えません。

まあ世界的に見ても「変化のない同じ世界の中で耽溺させて稼ごう」といった様相のエンタメが流行ってたりするので、世界の流れには合っているのかもしれません。

唯一の救いは、他のチームは他のチームで続いていて、新しいことも挑戦してくれていることです(シンデレラは怪しいですが)。なので、ここまで書いておいてなんですが、とりえずやってみて合わなければ離れればいいだけですよね。それに始まってしまったからには成功して欲しいですし、「良いとこ探し」の精神でこれから見ていきたいと思います。

ついでに、コンテンツとかで合わない部分が出てきた人に対して「お前はターゲットじゃなくなった」とか「お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではな」みたいなことを言って思考停止して消費するだけになるよりは、拙くても自分の感情やコンテンツに対して批評的な目線を持ってアウトプットする方が多少は生産的だと思います。



【おしまい】