【TC感想】「結果」に回収されない「過程」の面白さとか

「THE@TER CHALLENGE!!」(以下TC)お疲れ様でした。




私は雪歩に少女役で投票していたのですが、残念ながら星梨花に一歩及びませんでした(暫定ではありますが)。

…と、言葉の流れ上「残念ながら」とは言ったものの、そこまで落胆してるかといえばそうでもないです。それは、「雪歩はアマリリスの方が良かった」とか「桃子は役取れたからいいや」みたいなことではなく、単純にこの企画における「結果」にあまり興味がないのです。

こう言うと「そりゃあ既にドラマや音源が山ほどあるASのアイドルと、投票企画三連覇してる桃子が担当ならそんだけ余裕もあろうさ」とも思われるでしょうし、実際その側面もあるのかもしれませんが、それ以上に「過程」である投票期間にこそ、この企画の面白みがあると思うのです。


普通、「アニメランキング」や「ラーメンランキング」、シンデレラの「総選挙」も入れていいと思いますが、このようなエンタメ的人気投票企画において一番盛り上がるのは「結果発表」です。「俺の選んだ〇〇が入った!」とか「〇〇が一位か!」とか「なんで〇〇が入ってないんだ!」とか言いながら全体のランキングと自分のランキングを照らし合わせながら、意味のないことをやいのやいの言うのが、こういったランキング企画の醍醐味な訳で、当然それが一番楽しめるのは「結果発表」の瞬間です。

一方でこのTCを始めとする一連の投票企画では、投票期間中から常にランキングと得票数が公表されるため、「結果発表」時の楽しさはありません(投票が終わった時点でだいたいわかるから)。代わりにあるのが、候補たちが追いつ追われつするのを応援する、レースを見るような楽しさです。さらにその「応援」がが直でレースの結果に繋がることでより盛り上がるし、熱も入る訳ですが、まさにこの「応援」こそ、この企画の醍醐味なのだと思うのです。

「このアイドルにはこの役が合うんじゃないか」「どうやったら周りを巻き込んで投票を促せるか」と議論をしたり、一斉投票企画を立てたり、ハッシュタグを作ったり、絵を描いたり、動画を作ったりなどなど、投票期間中は皆がそれぞれ思い思いの方法でアイドルに役を与えようと行動していました。「役を与える」という目的があるのは勿論大きいのですが、それ以上にこうやって能動的にアイドルと向き合って楽しむことこそ、何よりアイマスにおける「プロデュース」となるんじゃないでしょうか。


最近のアイマスでは、エンタメ全体の風潮と、多数のキャラクターを捌くためでしょうが、公式でユニットを作り展開していくのが主流になっています。ですが、元々アイマスはキャラクターや曲といった素材を用いて、ユーザーがそれぞれが好きなように「アイドル(ユニット)をプロデュースする」ものだったはずで、既に出来あがったユニットや物語を受動的に「消費」するものでは無かったと思います。

まあそれは時代の流れでもありますし、実際そういうものが望まれているんでしょう。またそれで十分楽しめるほど、供給とクオリティが安定している現状も非常に幸福なことだと思います。しかし、それが全てになってしまえば、「アイドルマスター」である意味は消え、数多ある他の2次元アイドルコンテンツと変わらないものになってしまうと思うのです(一応、そういうものが悪いというのではなく、元々アイマスはそうじゃなかったのではないかということです)。

私がこの企画の「結果」にあまり興味がないのもそこで、仮に皆の「プロデュース」で役を取ったとして、最終的には誰かライターの方がシナリオを書き、えいちPあたりが曲を発注し、作詞家作曲家の方々によって曲が作られ、つまりはいつもの「公式」に回収されてしまいます。確かに自分の「プロデュース」が公式な成果に結びつくように感じられることは、勿論この企画の大きな推進力ではあります。しかし、どんな結果であれそこには自分以外の多くの人が関わっているわけですし、そこに重きを置きすぎて必要以上の責任を背負ったり、責任を誰かに求めるようになってしまうのは精神衛生上よくないので、ほどほどにしておいた方がいいと思います。


それに比べ「プロデューサー」達の「プロデュース」は自由で、無秩序で、その一方で1つの流れが出来たりして、少なくともこの企画においてはそちらの方が面白いし、害は少ないでしょう(少なくとも自分がやりたいことだけをやってるうちは)。

ここで「役」という縛りがあるのも良くて、完全な人気投票だったらば、なんでもできるが故に何もできず、結局は「アレのここが良い」「これはアレだから良い」みたく、あるものをただ推薦するだけになってしまうでしょう。適度な縛りがかえって自由度を広げるのです。

アイドル毎の陣営に分かれてチーム戦みたいになるのも刺激になりますし、何より大勢が寄ってたかってフィクションのキャラクターについて真面目に考えてるのが、星野源アイマスライブを指して言った「みんなで嘘を作っている」ようで、これもアイマスならではだと思います。周りに流されず自分の合うと思った役を推し続けるのも良いですが、多分この場合は周りの流れに乗っかった方が楽しめると思います。


…と、ここまで良いことばかりを言ってきましたが、投票期間中も終了後も一部でネガティブな反応があったように、この企画には問題も見られます。

まず1つは、アイドル毎の人気の差です。この企画は「人気投票じゃないところが良い」と言う人もいますし、私もそれに近しいことを言いましたが、実際問題キャラクターの人気はベースとなる投票数に大きく影響します。企画や流れ次第で戦えるとは言っても、初めからハンデがあることに変わりはありません。人気の有無は必ずしもキャラクターの良し悪しとは関係ないですが、応援する側からすればモチベーションの低下は避けられないでしょう(ただでさえ競争率は上がってますし)。そうなればこの企画を無邪気に楽しむのは難しくなりますし、全体の盛り上がりにも影響します。

ここで「公平公正な投票」などにすれば、人気による差が如実に現れてしまうでしょうし、かと言って露骨に贔屓しだすと周りも冷めてしまいますから、なかなか難しいところです。

全員に役を与える形にしたら、これまでのような盛り上がりは見込めないでしょうし、そもそもこの企画のためだけにそれだけの音源を用意するのは現実的では無いでしょう。

現実的に考えれば、もう5枠くらい追加するとか、スパンを短くするとかでしょうが、こんな素人考えで解決するのなら苦労はしませんし、だいたいこんな誰でも思いつくことは、大抵作り手側も考えているもので、あんまり悩んでもしょうがないので次を大人しく待ちましょう。または、その辺をカバーする別の企画でもいいですし。


もう1つ問題となったのが、各陣営間の対立(とそれを煽る行為)です。実質的な勝負の形になる以上、ある程度の摩擦は起きるものですし、それは刺激にもなり、1つの見どころでもあるわけですが、あまり過ぎると企画が壊れかねません。

幸い、今回殆どの方はその点冷静でしたし、致命的な問題は起こってなかったと思うので、今後も同様に大きな問題が起こらないことを願います。こういうことに運営側が介入し過ぎると、得てして面白みも無くなってしまいがちなので。


大きな問題はこの辺りでしょうか。まあ私が知らないだけで色々あるのかもしれませんが。

企画としては賛否両論あるくらいが丁度いいと思いますが、今後もブラッシュアップはしつつ、定期的にやっていただきたいものです。回を重ねて、定点観測的な見方もできそうになってきましたし。

総じて言えば、AS組も追加されて、これまでの一連の企画の中でも特に楽しめました。また、アイマス全体を通じて、このような双方向的な企画(今までの延長でないやつ)をやってほしいなあ。

着地がぼんやりしてしまいましたが、とりあえずこの辺で。


消灯ですよ。