【ミリアニ】『ミリオンライブ!第2幕』がやっぱり良くできていたので論理的に解説する(ネタバレ)

2023年10月8日(日曜朝10時からのニチアサ!)のTV放送に先駆けて劇場先行上映の始まったアニメ『アイドルマスターミリオンライブ !』第2幕を観ました。全3幕構成で、第2幕は第5話〜第8話まで。

 

第1幕がまあ素晴らしく、要所要所に配された布石を考えてもここから失敗のしようが無い感じだったので、大船に乗ったつもりで第2幕を観に行きました。

第1幕の感想↓

実際に観てどうだったかといえば、5話・6話は第1幕の流れで王道の素晴らしさがありましたが、続く7話・8話であまりにノリが変わっていて正直ちょっと戸惑いました。

その一方で「ここまであまりに上手くまとまっていて忘れてたけど、確かにこのトンチキさもミリオンの一部だったわ」と結局は楽しく見てしまいました。

しかもふざけてるような展開の中でも、実は各キャラクターのドラマはものすごく巧みに描かれていて、群像劇としてのレベルは非常に高かったと思います。

そして本作をTVシリーズとして考えたとき、7話・8話のようなコミカルな箸休め的エピソードは地味に重要で、物語に緩急が生まれて第3幕以降のクライマックスがより映えるようになるでしょう。まあそれはそれとして「これはどうなんだ」という部分もあると思うので(特に7話)、その点については各話を振り返りながら書いていきます。もちろんネタバレありです。

 

目次

 

第5話

前半のクライマックスとなる「原っぱライブ」の顛末が描かれる回。ミリオンのテーマ曲である『Thank You!』の象徴的な歌詞

みんなで作ったの

遅くまで残って

手作りの「ぶどーかん」

これをそのまま物語にしてしまうというのがまあ大胆。大胆ながら丁寧に作り込まれていて、文句無しのエピソードだったと思います。

 

この回は本当に情報量が多くて、触れはじめるとキリがないのですが、特に舌を巻くのはやはり群像劇の上手さです。

「キャラクターを描く」といったときに、「中華料理屋」とか「野球好き」とか「農家」とかそういう情報を単発で出すだけではどうしても「設定」の域を出ず、独立した「キャラクター」として立ち上がってはこないと思います。

その点本作は丁寧で、第4話では言いたい放題言ってるだけだった「やりたいこと」をこの第5話でちゃんと画として見せてくれることで、「本当に屋台やってる」「ストラックアウトしてる」「虫とってる」「ダンスしてる」などなど、「設定」でしかなかった情報が一貫した「個性」として認識できるようなシーンの積み重ねがとても上手い。このエピソードから第4話まであった名前のテロップが無くなりますが(新キャラの歌織と紬以外)、ここまででしっかりキャラクターを描けているのでほとんど混乱することもないでしょう(と言いつつ7話・8話と自己紹介や点呼という形でその回の主要キャラの名前が一致するようにしてくれているのでやはり抜かりはない)。

そしてそれぞれの願望が実現していくカタルシスひとつひとつが「原っぱライブ」成功の多幸感にも繋がり、本当に無駄がない構成。これに限らず本作の作劇はマジで上手くできていて、一見無意味なシーンもしっかり後の展開に繋がっていくので見ていて本当に気持ちがいいですし、「あのシーンは何だったの?」といった疑問にもしっかり答えてくれる安心感があります。それどころか単体でも十分に意味のあった第3話の「現場大臣」含め作業員の方々に感謝を伝えるシーンが「原っぱライブ」の協力にも繋がったりするように、意味の無さそうなシーンも意味があるし、その場でしっかり完結しているシーンも後々また別の意味が出てくるという、恐ろしいほど作り込まれた脚本になっているのです。

個人的に好きなのは、みんなで寝袋を並べて寝る「なんだこのシュールな絵面」と思わず笑ってしまうただのギャグとしか思えないシーンから、「これから私たちは芋虫から蝶になるんだ」とミリオンの現シンボルであるパピヨンマークに繋げる流れ。あまりに上手すぎてまた笑ってしまいました。

 

上手いと言えば『We Have A Dream』という選曲。第1話の『ToP!!!!!!!!!!!!!』もそうですが、以外すぎる選曲だけどめちゃくちゃストーリーにピッタリでAS曲からの選曲は本当に上手いとしか言いようがない。

私たちのこと見てて欲しい
人数多いけど
それぞれがとても個性的で退屈しないよ

アイマスのスロットが出た時の自己紹介ソングですが、当時は13人で「人数多いけど」とか言ってたのが+39人になって本当に多くなったなと笑ってしまいました。

アコースティックverの『Thank You!』も良いですし、これも完成版を最終回とかでやってくれるんだろうなと思って既にグッときています。

 

第6話

前回の静香パパの引きからタイムリミットが明かされ、静香の決意が固まり、翼の葛藤の布石が置かれ、2人の新キャラ歌織と紬が紹介され、劇場が完成し、「Team1st」がデビューし、プロジェクトが本格始動する回。1話に入る情報量じゃない。手際が良すぎる。

今回はカットバックで3つの視点が同時に描かれる結構難しい構成になっていますが、どの視点でもちゃんと「それぞれのアイドルに対する想い」という話題で一貫しているので、5人の想いをまとめて自然な形で混乱することなく提示することに成功しています。勉強になるなあ。

とはいえ流石に「Team 1st」の掘り下げはちょっと足りない気がしました。特にリーダー美奈子のエピソードがもうちょっとあってもよかったんじゃないかと思いましたが、これ以上入れる隙間無さそうですし、そこは上映後の週替わりボイスシアターで補完ということかもしれません。ただ本作のことなので、今後の話の中で何かしら見せてくれるのもちょっと期待してます。

 

新曲『Star Impression』は『Blue Symphony』の続編(作詞作曲も同じ)って感じでストレートに良かったです。MV風でありながらフォーメーションとかも分かりやすくて、映像演出としてもしっかり上手いなと思いました。

 

パンフの監督インタビューでも触れられていましたが、今回の「チーム」というくくりはとても良かったです。今回のユニットは一時的なものであり、メインはあくまでプロジェクト全体であるという描き方は、短い尺の中でストーリーの軸をぶらさないために効果的ですし、何よりミリオンらしいと思います。

『U149』にはじまり、ミリオン、シャイニーカラーズと連続でアニメをやる(しかもミリとシャニは脚本が同じ人)と聴いたとき「全部同じ話になるでしょ」と思いましたが、蓋を開ければひとりひとりを掘り下げる「U149」、全員まとめて描くミリオン、ユニット単位で掘り下げていくシャニと、上手いこと色分けができていて、流石に考えられてるなという感じでした。

 

第7話

問題の水着回。終始肌色が多くてハラハラする中で、アスレチックの危険性もやたら高くて二重でハラハラでした。

一応実況解説が事務員コンビで、プロデューサーが現地に居ない(異性の視線が無い)とか、過度に過激なのはダメよとハッキリ言ってたりとか、性的な目線に寄りすぎないよう最低限の線引きはできていたと思います…………多分。ただ瑞希が胸を気にする描写は、原作準拠とはいえ流石にもう厳しいよなとは思いました。

アスレチックはその高さから落ちたら海とはいえ危ないだろとか、クライミングの足場を土で作るなとか、SASUKEより難易度の高い棒登りとか、そういうところもツッコみだしたらキリがないでしょう。

 

しかし個人的には、観てなくても知ってる『アイカツ!』の勇者パースやら崖登りのパロディから『Do the IDOL!! ~断崖絶壁チュパカブラ~』の歌詞再現に繋げたあたりで、最初に書いた通り「ここまであまりに上手くまとまっていて忘れてたけど、確かにこのトンチキさもミリオンの一部だったわ」と、構成力の無駄遣いと合わせてなんか全てを許してしまいました。正直アニメで不意に挟み込まれるこういうトンチキ回は結構好き。

とはいえただのお色気ギャグ回なら実際無くてもいいかと思いますが、本作はやっぱり上手くて、こんな一見ふざけたシチュエーションもうまく活かして、なんだかんだキャラクターの魅力やドラマを描くことが中心となっているところです。

莉緒の間違ったセクシーや風花さんの受難を描くにはやはり海が1番効果的ですし、恵美の仲間思いな面もしっかり描かれていました。可憐が勇気を出す所も「原っぱライブ」で踏み出せなかったときからの積み重ねがあるので、短いシーンながら最大限のドラマを生んでいます。クライマックスの大立ち回りで海美の高すぎる身体能力もバッチリ印象に残ったりと、このシチュエーションである意味はちゃんとあったと思います。

 

第8話

桃子欲張りセット回。育桃に始まり、ほぼLTP12+リコッタみたいな縁しかない面子で固まった「Team4th」で向かうは遊園地、子役時代もガッツリ掘り下げられるという大サービスぶりに「いいんすかこんなに?」となってしまいました。

確かに第4話で桃子は少し損な役回りではありましたが、桃子にもちゃんと利がある描き方でしたし、続く第5話でも心境の変化がしっかり描かれていたので、さらにここまで手厚いフォローがあるとは思いませんでした。

 

もちろん1人の掘り下げにとどまるわけもなく、この回は桃子とこのみさんのダブル主役回と言ってもいいでしょう。「大人みたいは子供」の桃子と「子供みたいな見た目の大人」であるこのみさんという配置は的確な対比ですし、2人の成長がそのまま「ライブに客がいない」という問題の解決に繋がってるのがシンプルに上手い。

これが意外と難しくて、キャラクターの成長と課題の解決が分離している(故に盛り上がりに欠ける)話は多いです。桃子とこのみさんを主軸に、奈緒、亜利沙、ロコ、千鶴全員の個性を活かしつつ実現しているのが、これしか言ってないですがやはり上手いとしか言いようがない。

 

この回で一番気になるのはステージの穴でしょうが、確かに危ないとは思いつつも、劇の舞台装置としてちゃんと活かされていますし、そんなに怒るようなことではないと個人的には思います。これ現実じゃないしね。

むしろ第7話もそうですが、こういう分かりやすい「穴」もとい「ツッコミどころ」が多少ある方がTVシリーズとしては引っ掛かりになって愛されるんじゃないかという気がします。本筋の方がしっかりしすぎているので、こういう回が何話かあるぐらいでちょうどいいんじゃないでしょうか。

特にこういう7話・8話のような「ツッコミどころ」がある回は応援上映が盛り上がりそうです。それこそ「危なーい!」とか「(チュパカブラに )邪魔すんな!」とか「ももこちゃんがんばれー!」とか応援で「穴」を埋めるのが楽しそう。

そしてそれはTVの楽しみ方と同じで、要はみんなでワイワイ盛り上がりながら楽しめる「TVアニメ」に最適化されているのがこの7話・8話だったんじゃないかと思います。

 

第1幕はそれこそ映画として観ても差し支えないほど本当に完成度が高くて「この密度でやれるなら1クールで全然足りるな」と思いましたが、第2幕のTV的な寄り道エピソードを観ると「この調子で無限に観たい」と思ってしまいました。

 

ちなみにパンフによれば「Team5th」のドラマは「アニメとは違う形で語られる」とのことだったので、ミリシタとかCDのドラマパートで補完されるのでしょう。

楽曲に関しても「第3幕のお楽しみ」ということなので、現時点で曲が未披露のチームはまず間違いなく最終回のライブとかでまとめて披露されると思います。

 

気になったところ

流石に服とか髪とかずっと同じだなと少し思ったりしてしまいました。特に寝る時もしっかり髪を結んでる未来と紬とか、子役時代からはある程度ブランクがあるはずの桃子が今と全く同じ姿だったりとか、一瞬のシーンでモデルを作り直すのは労力に合わない3Dアニメのデメリットのひとつではあると思います。

 

一方でずっと同じ服なのも悪いことだけでは無くて、まず初見の人にとっては確実にキャラクターが覚えやすくなります。特に本作は登場キャラが膨大ですから、覚えやすいようアイコン化するのは必要な気もします。

それにその点もちゃんと工夫されていて、毎日着ててもおかしくないレッスン着のシーンを増やしたり、共通衣装の使い所も自然です。5話のヘンテコ寝袋シーンも「芋虫→蝶」に繋げる理由もありつつ、「みんなの寝巻きを作らなくて良い」という実務的な理由もあったと思います。7話がずっと水着なのも「せっかく作るならなるべく出さなきゃ割りに合わない」という理由もあったんじゃないでしょうか。

こういう3Dアニメならではの制作上の工夫に注目してみるのも邪道かもしれませんが楽しいと思います。

 

まとめ

第1幕に比べれば賛否分かれるかもしれませんが、やっぱりすごかったです。あまりに上手すぎる。

とは言えまだスポットの当たっていないアイドルもいて、特にエミリー、エレナ、歩あたりはまだ見せ場らしい見せ場が無いですが、ちょうどこの3人はこれからデビュー組なので、それは第3幕に期待でしょう。

逆に言えば8話の時点で36人はある程度印象的な見せ場があるということなので、この脅威的な手際の良さを考えれば安心していい気がします。単純計算で残り4話あればあと18人分の見せ場を作る余地がある!

そして第3幕は再び本筋に戻ってクライマックスに向かっていくようなので、間違いなく最高でしょう。ASとの絡みも楽しみ。

 

 

それでは今回はこの辺で。

消灯ですよ。