【ミリオン6th】福岡公演2日目感想(陰)——何の為の「テレビ」コンセプトだったのか

THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 6thLIVE TOUR UNI-ON@IR!!!!」福岡公演2日目感想(初日はこちら)。

2日目は現地、会場中腹のスタンド前方で鑑賞しました。スタンドとはいえ、アリーナと高さはさほど変わらず、むしろ下手なアリーナ前方とかよりも段差がある分、全然観やすかった気がします。ステージ方向の通路側というのもあり、近くはないものの(一応アソビストア 先行の席でしたが)快適な席でした。

初日はLVで爆笑しながら鑑賞していたのですが、実際に現地で観てみると、特にユニットパートは演出の可笑しさよりも、そこで演者さんたちか頑張っているが直で見える分、居たたまれなさの方が優っていました。

ユニット個々の細かい部分は初日の感想で書いたので、2日目はざっくりと前半(ユニットパート)、後半(ソロ・ユニットパート)、ついでにこのライブのコンセプトについてのことに分けて書いていきます。



ユニットパート

まずD/ZealはやはりLVよりも音がよく聞こえ、生の空気感が感じられる現地は最高でした。『ハーモニクス』の赤青にパックリ別れた照明も良かったです。

そこまでは期待通りでしたが、続く問題の夜想令嬢。

これがもう、現地で見てると急展開の話に笑ってなどいられず、演者さんたちの頑張りに涙が出そうになっていました。

LVでは分かりませんでしたが、皆が着席した客席側は非常に暗く、サイリウムが振られることもほとんど無いので、ステージ側から観客の反応を伺うのはなかなか難しい状況だったと思います。つまり演者さんたちは、観客の反応も分からないまま、何もない暗闇に向かって、一方的に脈絡のない芝居をしているような状況だったんじゃないでしょうか。初日のトークパートでゆきよさんが非常に不安がってたのも、なんか分かった気がしました。

せめて観客側を巻き込んだ演出があったり(展開に合わせた色を振るとか)、尺に合うちゃんと筋の通った物語に作り直すとかすれば良かったと思うのですが、結局あれは一つの舞台として成り立っているものではなく、ただの「感動の名場面」の羅列でしかないのです。「あれだろ?ドラマの再現したらウケんだろ?」ぐらいの浅はかな意識でやってて、それをライブでやることの意味をしっかり考えたとは全く思えません。でなければ平気で実際の舞台や衣装にそぐわないドラマの台詞をそのままぶつ切りにして垂れ流すなんてことはできないんじゃないですか?なんか観てる間「これ役者さんにもミュージカルにも失礼になってるんじゃないかな?」と勝手に心配になってしまいました。

「再現したらウケんだろ?」イズムで言えば次のEScapeもそうで、『LOST』の最後でイラストを再現するという演出がありましたが、「そこに至るまで何してたんだろうなあ」と思って実際に生で見たら、演者さんたちが完全に手持ち無沙汰な様子でステージを行ったり来たりしてるのです。これも結局「ウケそう」な演出をやる事ばかりに集中して、そこに至るまでの流れや、それをやる意義をちゃんと考えず蔑ろにするから、その過程や間が雑になるのです。これは最近のライブ全体に見られる気もします。あ、生で見た発光衣装も垂れ流しの映像や照明に紛れて全然映えてなかったです。

「ウケそう」な演出をやる事ばかりに集中していると言えば、最後のJelly PoP Beansの『月曜日のクリームソーダ』が何よりそうで、演者さんのパフォーマンスと演出が完全に分離しているので、もはやどっちが主役か分かりません。この場は完全に演者さんのパフォーマンスが主であるはずなのに、そこを中断する形でタップダンスやラインダンスを入れ込んでくるので、むしろその演出の記憶しか残りません。演者さんがタップダンスをやってみるとか、ラインダンスの中に入るとか、なんでもいいんですけど演者さんがそこに絡んでいったりすれば、それは「演出」と言えると思うのですが、そうはせずに「ウケそうな演出を見せたい!」という意識ばかりが先行してもはや「演出」が主となっている今回の形は、果たして「演出」と呼べるのでしょうか。

...そんな感じで、前半は初日LVのようにゲラゲラ笑って観ることはできず、「こんな演出の中でも演者さんは頑張っているんだなあ」というのを目の当たりにして、なんだか居た堪れない気持ちになってしまいました。わざわざ現地まで来たのにどうしようかと。



後半(ソロ・ユニットパート)

最高でした。

最近のライブはどこかいいパートがあると、別のパートや別の日程にしわ寄せがいって雑になるというのがお約束なのですが、まさに今回も「前半の雑さや浅はかさはこの後半のしわ寄せだったのか!」と思わずにはいられないほどブチ上がりました。

特に後半の前半戦『Decided』『恋心マスカレード』『ライアー・ルージュ』『フローズン・ワード』『Catch my dream』の流れは完璧で、最後の静香締めに至るまで「本当アゲ曲連打の時だけは知性を取り戻すなあ」と思いました。

後半の後半戦も『brave HARMONY』『ローリング△さんかく』『HOME RUN SONG♪』『Raise the FLAG』『俠気乱舞』と、若干桃子と昴の置き場所に困ってる間はありましたが、両者とも最高のパフォーマンス+△がいっぱい掲げられる会場の一体感と復活の祝祭感で、前後の流れにまったく引けを取らないステージになっていました。

あとこの流れだと桃子は『MY STYLE! OUR STYLE!!!!』の方がいいんじゃないかなあとちょっと思ったりもしましたが、そこはやはり信頼できる女・渡部恵子さん。最後の挨拶でしっかり回収してくれました。恵子さんは毎回こちらの思いを回収してくれて、他にもこちらが疑問に思うことをハッキリ言ってくれたり、やんわりフォローしてくれたり、本当に気が利いて信頼できるお方!ミリオンライブの良心!

ここは流れもそうですが、『Raise the FLAG』『俠気乱舞』あたりを頂点に高まっていく演者さんたちの熱量が何より凄まじくかつ素晴らしく、その熱量と空気感を感じられただけでも、現地に来た甲斐があったと思うことができました。

この最高の後半を終えて心の底から思いました。

「結局ソロがいいなあ」

「最低でも余計な演出は全部いらねえなあ」



今回のコンセプトはクソ

一通り公演が終わったところで、今回の「テレビ」というコンセプトを振り返ってみると、やっぱりクソだったと思います(タイトルもダサい)。

だって「いろんなユニットが出てきてパフォーマンスをする」というのは完全にフェスのそれでしたし(それならライブとも普通に親和性が強い)、そこをあえて「テレビ」にしたことで得られたのは「ただ映像を眺めているだけの時間」だけです。

今回現地で観てそれをより感じましたが、一つのユニットが終わるたびに美咲ちゃんの「振り返り」とユニット紹介VTRが挟まれるのは、かなり気がそがれますし、ストレスに感じます。なんでライブに来てんのにひたすら映像を見せられなきゃならんのだ。

そしてその映像は8割方「振り返り」なのです。

まず1ユニットが終わるたびに美咲ちゃんが出てきて振り返ります。4ユニット出てきて最後のユニットは振り返らないので、ここでまず3振り返り。

さらにアンコール後に美咲ちゃんが出てきて軽く振り返った後の振り返りVTR(めっちゃ長い)で2振り返り(ところでアンコールを受けて演者さんが出てくるんじゃ無く、その日撮った映像を流すの、ちょっとサイコパス感ありません?)。

さらに前半後半に1回ずつ演者さんたちの振り返りと、最後の挨拶もありますので、1日のライブの中で最低でも8振り返りもしているのです。ユニットパート内の演者さんの振り返りも含めれば、10振り返りはゆうに超えてきます。どんだけ振り返るんだ。

さらに今回の福岡公演では、夜想令嬢のステージ自体がCDドラマの振り返りみたいなものでしたし、初日にはミリシタ2周年の振り返り映像まで流れたので本当にヤバかったです。

そして演者さんのトークを除く映像の「振り返り」は大体「良かったですねえ」くらいのものなので、ほぼ新しい情報はありません。つまりは全部無駄。

それどころか、この映像による「振り返り」は基本予め収録されたものであり、つまり自分たちが作るステージを自分たちで「良かったですねえ」などと誉めたたえる、完全な作り手側の自画自賛以外のものではありません。終いには社長が出てきて「プロデューサー諸君!君たちは最高の番組を作ってくれたね!」みたいなことを言わせてましたが、観客側が入り込む隙など1ミリもないほど演出でガチガチに固めたライブをやっておいてどの口がほざくのか。特にここは自分らの演出に陶酔してる感じが出てて、かなりキてたと思います。よくもまあ臆面もなくできるなあ。

ということで、この「テレビ」というコンセプトで得られたのは、

「ただ作り手が自画自賛するための映像を見せられるだけの時間」だけです。


そもそも最近のアイマスライブにおける「コンセプト」は概ね無駄で、見る側としては全く関係ないものばかりなのです。

今回だってテレビだなんだという能書きがなくとも、ユニットがバーン!と出てきて「〇〇です!」と名乗れば全部済むのです。ハッチポッチの「鍋」とかデレ5thの「Serendipity」とかプロミ2018の「TOP」とか、どれも実際の内容にはさして与しない、取ってつけたような「コンセプト」ばかりです。

どうしてそんな「コンセプト」になってるのかを考えると、実際に取ってつけているんじゃないかと思います。

基本的にアイマスライブの内容は、前回のライブ以降のゲーム・CD・アニメの展開に強く影響されます。なので、演出家が入る以前に大まかな内容は決まっていると考えるのが自然です。つまり「コンセプト」も、その事前の内容にくっつけるような形になってるんじゃないでしょうか。

別にそれはそれでその「コンセプト」を深めていけば全然良いものはできると思いますが、いつも何か深く考えた様子が全くないのです。

今回で言えば、まずミリシタの中心展開である「ユニット」を基本にライブを作っていくというのが先にあったのでしょう。そこから「ユニットがいろいろ出るからテレビ番組ということにしよう!」という発想に飛ぶのも、まあ理解はできます(全て地方公演だったので、首都圏から見ると全部中継になるという点からの発想だと睨んでいます。地方からすれば地味に失礼な感じはしますが)。しかし、そこから「フェスとかじゃダメなのか?」とか「テレビである必然性はあるのか?」とか、ちゃんと考えた様子が実際のライブからは全く伺えないのです。

大体「いろんな人たちが代わる代わる出てきてパフォーマンスをする」なんていうのは、「テレビ番組」なんてものを装う必要などまるでなく、それこそ10年前からやってきた「アイマスライブ」そのものな訳ですし。

その上ユニットごとにいろんな番組をやるとかではなく、「音楽番組」ということで一括りにするもんだから、結局やってることはいつものライブと大差ないという体たらく。そもそもテレビの音楽番組だって、あくまで「ライブを中継して皆が見れるようにする一つの手段」であって「ライブでテレビをする」というのは本末転倒もいいところではないでしょうか。

コンセプトというのは、基本的に「こういうものを作る」という作り手の指針だと思うのですが、最近のアイマスライブにおける「コンセプト」は「今回のライブは例えるとこんな感じですよ」という説明にしかなっていないのです。別にそれならそれでもいいのですが、実際は説明を超えて、むしろ観客側に「こういう風に見ろ」という見方の強制になっているのです。

そしてその「見方の強制」は、アイマスライブのような「アイドルと中の人」「プロデューサーと観客」といった虚構と現実が入り混じる曖昧さが魅力の場においては、はっきりとマイナスにしかならないと思います。結局そのやり方の行き着く先は、MRのような「実際のアイドルが出てくるステージ」であって、声優さんはその代替物にしかなりません(その辺りはシンデレラ6thや今回の夜想令嬢のステージに色濃く出ていたと思います)。

ライブの感想では何度も言っていますが「声優さん」は「キャラクター」ではありません。いわゆる「2.5次元ミュージカル」などであれば、「その場におけるそのキャラクター」として存在もできますが、声優さんはあくまで「声」という、大きいがそれが全てではない一部分を担当しているに過ぎず、それゆえに絶対「キャラクター(全体)」にはなりようがないのです。

アイマスライブにおいては、声優さんの「キャラクターでなさ」を観客側が汲み取り、時に応援によってそこを埋めることによって成立させてきていて、それが成立した時の一体感や感動が、大きな魅力となっていたと思います。

最近はキャラと同じ衣装を着せたり、延々キャラクターとして喋らせたり、主に「声優さん」を消す方向の「演出」によって、声優さんの「キャラクターでなさ」を埋めようとしているように感じます。しかし現状上手くできてるとは思いませんし、どこまでいっても「声優さん」は「声優さん」であり「キャラクター」ではないので、ただただ違和感が目立つばかりか、観客側は見方を狭められ、ステージと客側の双方向性も無くなり(台本を読むというのが基本になるので)、何もいいことがないので、そういうやり方は即刻やめていただきたいです。


こんなことを書いていると、件の演出家のニヤニヤした顔が頭の遠くの方にチラつきますが、5thの感想でも書いた通り、ライブは一人で作るものではないので、別にすぐ辞めろとかは言いません。先述のように事前の展開やバンナムの意向によって「やらなきゃいけない要素」は無数に出てくるでしょうし、その状態で年に何個ものライブの演出をつけるのは非常に大変だと思います。ただそれを差し引いても、(ズブの素人がこう言うのは気が引けますが)単純にあの人は上手くないと思います。今回のライブで改めて思いました。もちろん良い瞬間もいろいろありますが、それ以上に粗が目立つのを「上手い」とも「天才」とも言わないですよね?

ともかくそれよりも重要なのは、大元のバンナムサイドがこれを是としていることです。

あのおどけた演出家も結局は出入り業者で、そこまでの決定権はないはずですし(あったらヤバいと思います)、そもそも企画を立てるのも、展開を決めるのも、最終的なGOサインを出すのも全部バンナムです。なので最近キャップからハットに替えた演出の人を変えても根本的な解決にはならず、同じことの繰り返しです。

バンナム側がちゃんと明確なビジョンを持ってコンテンツを運営していれば、ライブにこんなトンチキなコンセプトが入り込む余地など無いと思いますが(バンナム主導でやってたらなかなか絶望的ですが)、他の諸々の展開を見る限り、あまりそういったビジョンは感じられないのが現状です(常に新しいことをやろうとしているのはミリシタぐらいでしょうか)。

まあそんなことはバンナム側も百も承知で、15周年になる来年に向けて色々と準備をしてるだけかもしれませんが(とはいっても、現状その布石とかはさして見られないので、単発のお祭りで終わる予感もあります)。

こうなると、やはり元ディレ1的な全体を統括して引っ張っていく存在が必要なのかなあという気がしてしまいます(MCUにおけるケヴィン・ファイギ的な)。坂上さんはもっと管理職というか責任者としての存在っぽいですし。

かの人も今は馬をやめてフリーになったようで、アイマスに戻ってくる道筋もゼロでは無いとは思いますが、一方でそれはそれでどうなのという気もしないでもないです。

(いや、MCUよろしく謎の宇宙馬デューサーとして「増えすぎたアイドルを半分にする」とか言いながら宇宙から来たインフィニティアイドルを連れてきて、アイマス・アッセンブルする展開とかだったらちょっと見たいかも)

まあそれはともかく、コンテンツを追う側としては、ある程度未来への道筋を明確につけて欲しいと思います。どこに向かってるのか分からないものを応援し続けるのは難しいので。


......はっ、また根拠のない推論を並べながら福岡の感想から遠く離れたところへ来てしまった。

まあ今回のおかしなコンセプトのライブもこれで終わりですし、ミリシタでもユニット以外の見せ方もやろうという姿勢も感じますし(ユニットをやらないとは言っていない)、次のシンデレラ7thのコンセプトはちゃんとコンセプトとして機能していそうなので、終わったものは忘れて次を見ていきたいなと思い......


......ってあれ?まだこのコンセプトでやるの?



【おわり】