私的アイマスライブ論とシンデレラ5th宮城公演二日目雑感

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 5thLIVE TOUR Serendipity Parade!!! 宮城公演、2日間お疲れ様でした。私は二日目のみの参加でしたが、シンデレラに関しては初現地ということで、いろいろと感じたことを書いていこうと思います。

個人的に最近のシンデレラガールズのライブにはどうにもノリ切れずにいました。3rd以降の舞台チックな演出も楽しいことは楽しいのですが、どうにも「アイマスライブらしさ」をあまり感じられないのです。

では、私の思う「アイマスライブらしさ」とはどういうものかというと、「みんなでアイドルのステージを作っている感覚」があるかどうかです。以前、今や国民的歌手となってしまった星野源さんが「なぜアイマスが好きなのか」について語っていらした時に「みんなで嘘を作っている感じが……で、それが嘘が嘘じゃなくなっていく瞬間っていうのを何度も見れるっていうのが、僕は単純に感動してしまう」とおっしゃっていましたが、この「嘘」というのは要するに「アイドル」の存在です。ライブに絞って言えば、歌って踊るのはあくまでそういう仕事が本職ではない声優の方、観客の我々もファンではなく「プロデューサー」と呼ばれます。アイマスライブは非アイドルの声優さんがアイドルを演じ、非アイドルファンの我々が「プロデューサー」として声優さんをアイドルとして応援するいわばごっこ遊びのようなもので、それが「プロデュース」なのです。しかし、だからこそ本物に近づいた時に本物のアイドルとはまた違った感動を得ることができるのです。

また、アイマスの「様々な個性を持ったアイドルがそれぞれ独立して存在し、ソロで楽しんだり組み合わせを楽しんだりできる」という仕様通り、ソロのステージがメインとなることが多いのもアイマスライブの特徴と言えると思います。ソロは会場全員のイメージが一点に集約されるために「みんなで嘘を作っている」という感覚を強く感じることができ、またアイドル・演者が変わるたびにそれを味わえるので、ソロが多いこともまた「アイマスライブらしさ」を感じさせる大きな要素と言えるかもしれません。(SideMは固定ユニットがその役割を果たしていて、大人数をさばくのには非常にうまい手段だと思います)

765ASやミリオンのライブは歌唱時の演出がほとんどなく(やりたくてもできなかったのかもしれませんが)、良くも悪くも「隙」があります。声優さんはそもそも歌って踊る職業ではありませんから、どうしてもプロのそれとは見劣りする場合もあります。我々観客がコールをしたりサイリウムを振ったりするのはまさにその隙を埋めるためであって、それがまさしく「みんなで嘘を作って、本当にしていく」という感覚で、これが個人的にはそれが「アイマスライブらしさ」を得る重要な要素だと考えています。

一方本題のシンデレラはというと、3rd以降演出もセットや衣装も派手になってきて、どうも先述の「隙」がそれらでもう埋まってしまい、我々観客が付け入る隙がなくなってしまったように思えてしまうのです。ステージとしての完成度は勿論高いのですが、少なくとも私が思う「アイマスライブらしさ」からは離れたように感じるのです。

特にそれを実感したのは4thSSA初日で、この日はいつものレギュラーメンバーが居なかったり、初出演の方も多く居たりでそれをカバーする意味合いもあってでしょうが、ソロに他のメンバーが加わったり、サプライズを多用したりとひときわ派手な演出が加えられました。ステージの成功率を上げるためには正しい演出なのでしょうが、ASやミリオンのライブで会場全員でアクシデントを乗り越えてきたのを見てきたこちら側としては(当然アクシデントが無いに越したことはありませんが)、この派手な演出は「観客を信用してないんじゃないの?」とも思ってしまいます。二日目のアニメの振り返りパート(これも一方通行感が気になったのですが)が終わった後のレギュラーメンバーのソロは、従来のアイマスライブ通りのシンプルな見せ方をしていただけに、余計にそう思ってしまいました。

ライブの他にもシンデレラ運営は、送り手と受け手の相互作用を楽しませる気など毛頭なく、「こちらが完成度の高いものを贈り続ければよい」と考えている節が強く感じられたりするのですが、それは一旦置いておきましょう。

しかし、シンデレラの演出過多なエンタメライブも、たとえ一方通行でも楽しいのは間違い無いですし、「みんなで作っていく」という「プロデューサー」的意識は持たずに「ファン」として参加すれば普通に楽しめるのでは無いかとも思っていたところで今回の5thツアーが始まりました。

前置きが長くなりましたが、ここから5th宮城公演二日目の感想になります。

個人的には今回の宮城公演二日目がシンデレラのライブでは初の現地参加でした。一応1stから抽選に応募はしていたのですが、呪われているのかと思うほど1枚も当たらず、今回もたまたま一般販売からの参加ですから、未だチケットが当たる様子はありません。

現地の様子ですが、(新規が多いためであったり、会場特有のものかもしれませんが)比較的おとなしく感じました。いわゆる「厄介」てきな方もさほど目立ってはいませんでしたし、「人がたくさん集れば必ず出てくるおかしな人」レベルでしたので少し拍子抜けしましたが落ち着いて観られました。また、私の席から見る限り女性も比較的多かったように思います。会場も遠征民からは魔境だったようですが、現地民としては来るときも出るときも車でスムーズに移動できたのでとてもよかったです。サイズ感も丁度よさそうでしたし。2日目に関しては本人確認もスムーズでしたし(あんまりちゃんと見てない?)、今回一般販売でチケットを取れたりしたのも本人確認の存在があっての事でしょうし、他チームでも続いていけば良いなあと思います。

ライブ本編についてですが、あまり予習をしていなかったことも相まって、全体としては新鮮に楽しめました。1日目のセトリをぼんやり見て、個人的にとても好きな「スローライフ・ファンタジー」があったので、「セトリ変わるとしたら聴けないのかあ」などと思っていたのですが、両日同じセトリということで、片日参加の私としてはとてもありがたかったです。他会場も同様に両日同じセトリだとして、それがアイマス全体で定番化すればチケット戦争も多少緩和されるでしょうし、とても良いことだと思います。そもそも2daysのライブで両日セトリを大幅に変えたりするのは、大きいハコを埋めるために両日参加を増やすための戦略という面もあったりしたでしょうし、今となっては単にチケット戦争を生む大きな原因ですから、観客側としてはそろそろ控えていただきたいところです。

今回のライブは、レギュラーメンバーのソロを中心とした安定感を感じさせる前半、初参加メンバーも前に出しつつアゲに特化した後半に分けられると思います。

前半の個人的ハイライトとしては、やはり『スローライフ・ファンタジー』でしょう。まず曲自体が非常に好きでしたし、あんまり動かないダンスもよかったです。何より曲終わりターミネーター2よろしくピースサインを掲げながらリフトで下がっていく退場は新しすぎて笑ってしまいました。

他にも『にょわにょわーるど☆』のウェーブやらの件については、一日目に説明があったようで2日目のみ参加の私などは対応できませんでしたが、定着していけば楽しい曲になりそうです。それから『Flip Flop』はライブで何度か聴いてはいますが、音源を持っていないので曲調がころころ変わるところでは毎回戸惑いがちです。

属性曲を挟み後半一発目は千菅さんによる『One Life』だったわけですが、元々歌手活動にも力を入れている方ということもあってか完全に会場をロックしており、その後のアゲセトリへの流れをしっかりと作っていました。今回のライブでMVPを挙げるとすれば間違いなく千菅さんでしょう。『Nocturne』でも『純情Midnight伝説』でも強烈な存在感を放っていました。

他にもアガる曲が目白押しで、『メルヘン∞メタモルフォーゼ!』の予習不足を悔やんだりしましたが、『サマカニ!!』などぼんやりした記憶でも楽しくコールしたりクラップしたりできたので、後半のアゲセトリの締めとして最大級にアゲていたと思います。

総じて演者さんのパフォーマンスは素晴らしかったのですが、その分ソロが無かったメンバーの存在が気になってしまいます。桜咲さん、のぐちさん、朝井さんなどはユニットでもセンターで歌う機会があったのでまだよいですが(他の方もセンターにいたらすいません。なにぶん遠かったもので...)、佐藤さん、金子さん、伊達さんあたりは正直埋もれがちだったように感じてしまいました。特に曲はあるのに佐藤さんのソロが無かったのも気になります。松嵜さんの素晴らしいアシストによって、ソロがないメンバーにも曲間でアピールする機会が作られたりもしましたが、その辺りは初めから演出でカバーすべきところではないのでしょうか。

今回は公演時間もそれほど長くはありませんでしたし、仮に全員がソロ曲を持っていたとしても15人全員がソロを歌ってしまったらそれだけでライブ終わってしまい、それぞれの出演機会も無くなってしまうというのもわかります。しかし、それでもソロがないメンバーには全員ユニット曲でセンターに立つ機会を与えたりと、いろいろとやりようはあったはずです。

これも時間が無かったためでしょうが、自己紹介が無く冒頭の全体曲中のテロップで済まされていたあたりも少々気になります。これは3rdからの流れではありますが、3rdはアニメからの流れがあり、4thSSAでは個別衣装があったりと、いろいろと判別の術がありました。しかし、今回は衣装も遠目からでは違いが分かりませんし、初出演の方も多い中で大勢で並ばれると正直誰が誰やら分かりません。ソロがあったりすれば、歌やセリフに関しては基準ができてユニットでも聴き取りやすくなったりするのですが、基準が欲しい初出演組や曲のないメンバーに限ってソロがありません。曲が無いのはどうしようもないので、ここはやはり自己紹介をしっかり入れていただきたいところです。「みんなで嘘を作る」というアイマスライブの性質上、その嘘のイメージを全員で共有することは「アイマスライブらしさ」を得るために重要なものなのです。(最近定番のあの長いイントロを無くしたりすれば入りませんかね?)

それもこれも4thのようにエンターテインメントなライブであれば、ストーリーが主役になり演者はそれを進める歯車の一つになるのであまり気にならないのですが、今回の宮城公演は従来のアイマスライブに近づけてきた分余計に気になってしまうのです。エンタメライブではないが、アイマスライブとして見れば気持ちよく「プロデュース」させてくれず何ともモヤモヤするのです。

とはいえ全体としては楽しめましたし、まだまだ公演も残っているので、ファンとして応援しつつ動向を追っていきたいと思います。

改めて宮城公演2日間お疲れさまでした。


【終】