折坂悠太「心理ツアー」仙台公演感想

折坂悠太の最新アルバム『心理』を引っさげたライブツアーの仙台公演に行ってきました。

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音源同様ライブも最高で、終始「こんな格好いいことある?」と思いながら鑑賞していました。

ステージはそれほど大きくなくて、折坂悠太を中心にバンド「重奏」が半円状にぐるっと囲む形。「重奏」の編成は上手から順にエレキギター、サックス、ドラム、パーカッション、ウッドベース、鍵盤という並び。これまでのツアーの写真やライブビデオでも気になっていたのですが、パーカッションの男性は今回も半裸でした。

ステージ前方にはおそらく銀のシート状の何かを丸めたようなものが数ヵ所配置されていたほか、「重奏」の背後にも同じく銀色のシートが広げられていたり、円錐状に配置されたりしていました。これらの物体を見て、『炎 feat. Sam Gendel』のMVのイメージもあったのかもしれませんが、なんとなく『心理』っぽいなと思いました。ちなみにただの舞台美術ではなく、ラストには(多分)あっと驚く使い方をされていました。

冒頭から『爆発』『心』『悪魔』の3曲を続けて演奏。久々に生バンドの演奏を生で鑑賞したという感慨が何よりまずあって、音の圧はすごいし、生で音楽が生まれてる事実そのものに、当たり前ながら感動したりしていました。この3曲の中では特に『悪魔』のサックスが音源よりもずっと印象的に響いていました。

 

MCでは短いながらも会場の「パフォーマンス広場」ってなんだという話や、「ラジオでデパ地下の手羽先をおすすめされたが、我々は時間が無いので失敗できない……」など独特なトークで、基本客席の発声は無い中でも笑いが漏れていました。

 

その後は『みーちゃん』『揺れる』『口無し』とアルバム『平成』や過去の曲が聴けたのが嬉しい。特に『揺れる』は宮城だからこその演奏だったんじゃないかと思います。

 

個人的に『朝顔』『針の穴』『トーチ』の流れは、好きな曲が並んでいて前半のハイライトでした。演出面でもこの辺りは面白く、『朝顔』では落ちサビで朝日のように眩しい照明が客席に向けられたり、最後の「群青!淡紅!」「そりゃ上々」のタイミングで客席に照明が当てられて、声は出さずともコール&レスポンスしてる感じが楽しかったです。この後でも触れると思いますが、全体的に照明演出がとっても良かったです。

『針の穴』では会場全体でクラップするパートが楽しかったり、『トーチ』では上部にひとつだけオレンジの灯りがともっているのが印象的でした。

 

そのあと「重奏」のメンバーが一旦退場して、折坂悠太の弾き語りパート。「作ってからなかなかものにできないが、今日なら歌えそう」と『鶫』を披露。原曲よりもドライな印象で、歌詞がよく入ってきました。

続く『夜学』は弾き語りというよりもはや演劇的な語りで、スポットライトひとつで言葉を紡いでいく折坂悠太が本当に格好よかった。その上途中で「重奏」のメンバーが戻ってきて、どんどんと音が重なっていく様は『ストップ・メイキング・センス』や『アメリカン・ユートピア』のような感動がありました。

この時点で最高に痺れているのに、そこからさらに『鯱』『荼毘』と怪し格好いい曲が連続するのでもう痺れっぱなし。この辺りでは「重奏」メンバーひとりひとりを照らすように足元に設置されていた照明が活きていて、暗闇に赤や緑に光が浮かび上がるような形になっていて、曲の怪しさを最大限に引き出していました。

 

終盤では『炎 feat. Sam Gendel』『星屑』『윤슬(ユンスル) feat. イ・ラン』と終始うっとり聴き惚れるパート。歌も演奏も本当に気持ちがいい。『윤슬(ユンスル) feat. イ・ラン』のイ・ラン氏の語りが、本人がいないことでかえって印象的になっていて、最後には語りの一節がループして本編最後の『春』に繋がっていくのが面白かったです。『春』では折坂悠太がスレイベル(だと思います。棒に鈴がいっぱいついたやつ)を肩に担いでいる姿がめちゃくちゃ決まっていました。

 

アンコール(パンパンパンとリズミカルに拍手をする形。もうコロナ以降の定型が出来上がってるのか自然発生なのか気になります)では、メンバー紹介の後『坂道』『さびしさ』を披露。『さびしさ』はアウトロがかなり長めに取られていて、この心地よい音に包まれて死ねたら幸せだろうなと思いました。

 

最後の曲は『鯨』。深海のような濃紺の照明から、次第に真っ暗になり、波の音だけが流れる。会場が明るくなるとステージには誰もおらず、銀のオブジェクトも無い。客席が戸惑う中、スタッフの退場の案内でようやく終わったのだと気づくなんともアバンギャルドな、夢でも見てたのかと思う終わり方。

暗闇だったので確かではないですが、多分最後の波の音は舞台美術の銀のシートをもっていく音で表現してたんじゃないかと思います。暗闇の中でまさかアレがそんな使われ方を!?と、かなりびっくりしました。

 

音楽的にはもちろん最高でしたし、演出面もかなり凝っていて、期待していた何倍もいいものが見られて本当に嬉しかったです。この思い出でまたしばらくは頑張れる。

 

 

それではこの辺で。

消灯ですよ。