【映画】2021年映画ベスト10

2021年に観た映画のベスト10です。

 

10.『マトリックス レザレクションズ』

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1999年公開『マトリックス』シリーズの18年ぶりの続編。『マトリックス』が既に知れ渡り常識となった現在に改めて続編を作る意味について、ものすごくよく考えられた続編だった。陰謀論者に利用されてしまった1作目から、現実と虚構という二項対立を超えて「人を信じる」ことの重要性を説くに至った本作は、恐怖と欲望をエサに対立を煽る現代社会にハッキリNOを突きつける。その鍵となるトリニティの選択と結末には強いカタルシスを感じた。1作目ほどの派手さは無いが、さりげに面白いビジュアルを見せてくれるのも良い。

 

9.『モンタナの目撃者』

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森林消防隊員のハンナは、重要な情報を握る少年コナーと出会い、彼を追う暗殺者から守ろうとするが、そこに山火事が起こり……。ジャンル映画として求められる要素を過不足なく(しかし程よい驚きをもって)丁寧に描き、そこに「森林火災」という新鮮な要素が加わっており、映画を観る楽しさを強く感じられた作品。

 

8.『空白』

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スーパーで万引きした少女が店長に見つかり、逃走の末に事故で死んでしまう。少女の父親は店長の責任を激しく追求していくが、その行動は徐々にエスカレートしていき世間を巻き込み関係者全員を追い込んでいく……。起こってしまった悲劇に安易な答えを出さず、折り合いをつけられない心とこれだけ向き合う作品はなかなか無い。現実は折り合いのつけられない事ばかりで、どうしても分かりやすい答えに飛びついてしまうが、やはり悩み続けるのが辛いが一番誠実な態度なのだと思う。

 

7.『ビーチ・バム まじめに不真面目』

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ムーンドッグは才能ある詩人だが、詩を書かず毎日遊んで暮らしていた。ある時資産家である妻が事故で亡くなり、自由に金を使えなくなったうえ、新作を書くまで遺産は相続させないという遺言のため、真面目に生きることを余儀なくされるが……。主人公ムーンドッグが、ひたすらに自由かつナイスな人柄でとにかく魅力的。散々女遊びをしつつも妻のことは心から愛しているし、反対に妻の浮気(しかし夫のことは心から愛している)を知ったときには傷ついたりもする。一見都合のいい態度にも見えるかもしれないが、人間の感情なんて筋の通るものではないし、ムーンドッグはナイスに振る舞うという点は徹底しているので見ていて本当に気持ちがいい。他にもどうしようもない人間がいっぱい登場するのだが、彼らを頭ごなしにジャッジすることは無く、まさに多様性に満ちた描き方がされているのも良い。

 

6.『フリーガイ』

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ある日、自分のいる世界がプログラムで出来たオンラインゲームと気づいたモブキャラ「ガイ」が自我に目覚め、その世界世界を救うため奮闘する。「この世界は全部嘘っぱちで、自分が生きる意味なんてないんじゃないか」という葛藤は普遍的なもので、事実人が生きる意味なんてものはない。しかし「ガイ」は自分がプログラムであることを認めつつ、想いを寄せる「モトロフ・ガール」のために立ち上がる。そんな普遍的な問いと、利他的な行いの尊さという、しっかりとしたメッセージが根底にありつつ、全体としては非常に楽しいエンターテイメントとなっている非常によく出来た作品だった。

 

5.『ザ・スーサイド・スクワッド

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犯罪者を集めた特殊部隊が組織され、命懸けの危険な任務に挑むが……。軽薄に人が死ぬ!ゴア描写もたっぷり!触手!基本的にくだらないノリがずっと続く中、最後は寓意の込められた一撃で泣かせてくるという、見たかったものを120%見せてくれたとっても楽しい作品。

 

4.『マリグナント 凶暴な悪夢』

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間近で恐ろしい殺人を目撃する悪夢に苛まれるマディソン。その連続殺人が現実世界でも起きていく。その悪魔の正体、そして彼女の過去とは……。過去と今、光と陰、虚構と現実、常にこちらを揺さぶりながら、ものすごい熱量で思ってもみないところまで連れて行ってくれる至福の時間だった。要所要所で笑わせてくる妹をはじめ登場人物も皆いい味を出しており皆魅力的。クライマックス、決着の描き方には思わず拍手しそうになった。超アゲアゲ。

 

3.『プロミシング・ヤング・ウーマン』

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コーヒーショップで働くカサンドラは、毎晩ベロベロになったフリをして、下心100%で寄ってくるクソ男に制裁を加えていた。ところがある日、医大の同級生だったというライアンと出会ったことで、彼女がクソ男に制裁を加える日々を送るようになった原因の、過去のある出来事が明らかになっていく……。男どもの性差別的言動がクソなのは当然として、それを擁護する奴もクソだし、クソだと言いつつ何もしない奴もクソ。そして最後はそんなクソと戦う女性を安全な立場から見て溜飲を下げている、自分のよう人間のクソさを突きつける。「じゃあどうすればいいんだよ」とエンドロールの間呆然としてしまいまったが、逃げ道のない本作の中で唯一可能性が示された弁護士のように、結局のところそうして考え続ける他ないんじゃないかと思う。

 

2.『あのこは貴族』

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東京生まれのお嬢様・華子は、良家の弁護士・幸一郎と結婚して順風満帆に思えたが、地方から上京してきた美紀と出会うことで人生が変化していく。経済格差、地域格差、そして上流階級内における格差まで描き、生まれや育ちというくびきの強力さがよく分かる。その中でも、異なる階級の女性ふたりのささやかな交流によってそれぞれの人生が変わっていく様は(変わるのはもっぱら華子だが)、見ていてとても気持ちがいいし勇気が出る。個人的には公開当時の首相の息子のニュースに幸一郎が重なって、強いリアリティを感じたりした。

 

1.『アメリカン・ユートピア

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元トーキングヘッズのデヴィッド・バーンによるブロードウェイショーを、『ドゥ・ザ・ライト・シング』等々のスパイク・リー監督が映画化した作品。シンプルなステージ上を、これまたシンプルなグレーのスーツで揃えたバンドが、完全ワイヤレス化された楽器を携え裸足で自由に動き回る。シンプルなセッティングだからこそ、次から次へと繰り出される演出がまあ映える。「こんな見せ方があるのか!」という演出やパフォーマンスが絶え間なくやってくるまさに至福の時間。舞台としても素晴らしいのは当然として、映像の切り取り方も的確であり、スパイク・リー印のハッとさせられる瞬間もしっかり用意されている。歌・演奏・ダンス・照明・構成・編集全ての要素が素晴らしい大傑作。100億点。

 

 

以下ベスト10まとめ

1.『アメリカン・ユートピア

2.『あの子は貴族』

3.『プロミシング・ヤング・ウーマン』

4.『マリグナント 凶暴な悪夢』

5.『ザ・スーサイド・スクワッド

6.『フリーガイ』

7.『ビーチ・バム まじめに不真面目』

8.『空白』

9.『モンタナの目撃者』

10.『マトリックス レザレクションズ』

 

 

他に今年観た作品で気になったもの

ノマドランド』

『あの頃。』

「これは自分の映画だ!」と心の一本になることがあるかもしれないが、個人的にはあまり共感するとひたすらに居心地が悪くなる。今年そんな気持ちになったのがこの2本。

 

『最後の決闘裁判』

『ラストナイト・イン・ソーホー』

『プロミシング・ヤング・ウーマン』があったため外したフェミニズム的な視座を含んだ良作2本。ただどちらもモヤモヤする部分が無いでもない。特に『ラストナイト・イン・ソーホー』はサブキャラの扱いとか決着の付け方など気になるところがちょこちょこあったが、悪夢描写にかなりくらってしまって、『プロミシング・ヤング・ウーマン』に近いぐらいぐったりしてしまった。

 

 

今年はリバイバル含めても50本ちょっとしか観ておらず、小規模な作品をあまり観れなかったので、来年はもう少し色々な作品を観たいなあと思っています。

 

それではこの辺で。

消灯ですよ。