【MA4】MASTER ARTIST 4 第4弾(千早・雪歩・伊織・真美)レビュー

2021年6月16日『THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 4』第4弾(ラスト)として如月千早萩原雪歩水瀬伊織双海真美の4タイトルがリリースされたので、それぞれレビューしていきます。

 

 

2019年12月16日に放送された「ゆくM@S くるM@S 2019」にて製作発表されて以来、1年半がかりでリリースされてきた本シリーズもこの第4弾でついにラスト。コロナ禍もあってか、リリースにかなり時間がかかりましたが、時間をかけたぶん毎回よく考えて作られているのがわかる内容で、回を重ねるごとにクオリティも上がり、結果的にこの時期でなければ作られなかったであろう有意義なシリーズになったと思います。

 

改めて本シリーズの特徴をおさらいしますが、まずテーマは「変わるもの、変わらないもの」。全体として、これまで重ねてきた時間を踏まえつつ、ここから再出発しようという意志が強く感じられる内容となっています。また、それぞれ用意されたソロ新曲は毎回テーマの「変わるもの」か「変わらないもの」のどちらかに準じた歌詞になっていたり、作り手も過去765ASに歌詞や曲を提供した人と初参加の人の2パターンに分けてテーマを表現しています。

 

そしてカバー曲は基本的にリクエストの中からキャスト自身で選曲しており、その選曲理由が本人の口から聞けたりするのも楽しみの一つ。一部のキャラクターはソロ新曲にもキャストの意向や思いが反映されていたりして、過去のCDの中でキャストが関わる部分が最も多く、その分キャスト自身の満足度も非常に高いため、その思いが強く感じられるアルバムになっています。

 

MA4第4弾となる本作では、新曲の作り手としてまず数々の千早のソロ曲の歌詞を手がけた森由里子先生が「変わらないもの」サイドを代表して、千早の新曲に歌詞を提供。残りの3人は、シンデレラへの楽曲提供や生バンドのドラムとしてもお馴染みの山本真央樹氏、バンナムサウンドチームからアイマス初参加の岡田祥氏、工藤祐介氏の2名を中心に、765AS楽曲初参加のメンツで固められています。中でもアイマス楽曲の核であり強みでもあるバンナムサウンドチームから、しかもアイマス初参加の2人が入っているのが嬉しい。楽曲は第3弾同様、一部の新曲(伊織・真美)ではキャストの意向が反映されるなど、第1弾・第2弾のような一貫したテーマ性よりも楽曲のバラエティを重視した構成になっており、充実した内容となっています。

 

そして今回第4弾は全体としてトークパートがなかなか良くできていたので、今回はそこも含めてそれぞれレビューしていきたいと思います。

 


 

10  如月千早

 

 


・『Coming Smile』
作詞:森由里子 作曲:哥丸雄貴 編曲:yamazo

 

『蒼い鳥』から数えて千早とは5度目のタッグとなる森由里子先生作詞の1曲。作曲の哥丸雄貴氏、編曲のyamazo(山田知広)氏は共にアイマス初参加。これまで森先生と千早のタッグ曲は全て別れについての歌詞だったのが、今作はさらに一歩進んで周りの人たちに手を差し伸べて行くような、千早の楽曲の中でも屈指の柔らかさを誇る楽曲になっています(当然「変わるもの」側の楽曲になるでしょう)。ただし明るさ一辺倒というわけでもなく、笑顔がテーマの曲に入れるにはあまりに重い「絶望」という言葉を中心に悲しいニュアンスがしっかり入っているほか、2番の終わりにイントロのフレーズがマイナー調で反復されるなど(音楽は弱いので間違ってるかも。ただ作曲の哥丸雄貴氏がTwitterで「後半のメロの展開は今まであったイメージをほんのり匂わせてあります。」と語っていたのはこの部分じゃないかと)、影も含んだ千早ならではの楽曲になっています。『Coming Smile』に込められたダブル・トリプルミーニングに関しては森先生がブログで自ら語っているので説明はそちらに譲りますが、今回も「未来なら変えられるわ 歓びに」「微笑みは絶望を消してゆくね」など、よくあるフレーズから一歩踏み込んだり、ちょっとした言葉選びでオリジナリティを発揮するなど、森先生ならではの匠の技が楽しめる歌詞になっています。

 

ちなみに『蒼い鳥』『眠り姫』『Snow White』と森先生が作詞をした千早曲はどれも童話がモチーフとなっており、その「物語シリーズ」続編の構想が森先生の中に既にあって、モチーフとなる童話もタイトルも決まっていたそうですが、今回のテーマには合わないもっと暗めの歌詞だったそうで今回は見送りになったようです。(今回の『Coming Smile』 も「君」のおどけた姿を見て思わず笑ってしまうくだりなどは、同じ展開のあるグリム童話『黄金のガチョウ』のニュアンスが入っている気もします)

 

 

・『歌う人』 (オリジナル・アーティスト:KOKIA

・『ハロー』 (オリジナル・アーティスト:AJISAI)

 

今回『Coming Smile』に代表されるように千早が過去最高に柔らかい表情で歌っているのですが、それが単に「よかったね」というだけではなく、表現の幅を広げているというのが今回の聴きどころ。今井麻美さん個人名義の楽曲で味わえるような豊かな表現の幅を千早でも獲得できたのは、時を経て柔らかくなった千早の大きな強みなんじゃないかと思います。(今井さん個人名義の曲を聴くと千早の歌でさえその表現力の一部だということが分かります。)

 

『歌う人』ではあえて生かしたというブレスがかなり効いていて、生歌のような緊張感と感動を演出することに成功していて、タイトル通り歌の存在感が強く感じられます(ブレスを生かすことに関してはおそらくMA4全体で一貫した方針で、それが本シリーズ全体に通底した歌声の実在感に一役買っているんじゃないかと思っています)。『ハロー』では今井さんが語られていたように、2011年のアニメ『アイドルマスター』20話を思わせるようなドアをめぐる描写がストレートに感動的。千早の弟の優として入れたコーラスが小さく入っているとのことなので、聞き込んで見るのもいいでしょう。

 

 

・『マジで…!?』 作詞:BNSI(くぼけん・エトウ) 作曲・編曲:BNSI(佐藤貴文)

 

本作の千早の柔らかさはコミカルなこの曲でも健在で、多少恥ずかしがっている部分もありつつも硬さはなく、非常にのびのび歌っています。第2弾から第3弾まで開催されていた「おもしろ『マジで…!?』選手権」(勝手に言ってる)も、今回第4弾では適度にに遊びつつ可愛さを残した丁度いい落とし所を見つけた模様。千早も色々と「マジでヤバイ!」のバリエーションを出しつつ素直に可愛さを出しています。

 

 

・『New Me, Continued』 作詞:八城雄太 作曲:俊龍 編曲:Sizuk

 

キャラクターの個性を足し算的に強調して見せるのが『マジで…!?』なら、あえて要素を削って引き算的に見せるのがこの『New Me, Continued』。他のキャストが「あえて何もしないでください」とディレクションを受ける中、今井さんだけが何も言われてなかったというのは、そもそも千早は歌い方で細かく「らしさ」を出すというより、その歌声だけでキャラクター表現が成立しているということでしょう。

 

 

トークパート

 

まず『Coming Smile』 で「笑顔」をテーマにした曲を歌うことに対する思いを語っていて、それがラジオや発売前の生放送で今井さんが語っていたことと重なって、虚実の境が曖昧になるような感覚を覚えました。他にもSNSや画像加工アプリのことを話題に出していたり、他事務所との関わりを語ったりなど、今の時代感や今井さんのトークを思わせるような要素が多数盛り込まれていて、キャストとキャラクターのリンクで実在感を出すアイマスならではの感覚を強く感じました。

 

 

 

11  萩原雪歩

 

 

・『芽吹の季(とき)』 作詞・作曲・編曲:山本真央

 

12年来の雪歩Pである山本真央樹氏がついに雪歩のソロを担当することとなった1曲。「歌詞も1行1行全て、音楽的な部分にもほぼ全て雪歩と意味のある様な展開と構成にさせて頂きました。」と語っているように、歌詞は「雪歩」という名前から「泣き虫」「穴掘って埋まる」「詩(ポエム)」に至るまで、雪歩にまつわるあらゆる要素を過去最高クラスに詰め込んだものになっています。また過去の音源から雪歩の音階を研究して曲を作るなど、その熱の入りようはさすがという他ありません。

 

特に「穴掘り」要素に注目した曲は、ファミソン8bitシリーズで『ディグダグ』とコラボした『EXCAVATE』以来であり、しかも単にネタ的に消費するのではなく「穴掘って埋まった」状態を芽吹きを待つ花の種に重ねて、涙で花を咲かすという、きっちりエモい構成に仕上げてるあたり愛情のなせるわざかと思います。その上で表現としても穴の中にいる状態を「暗がり」や「土」で表したり、穴から出た状態を「光」や「風」で間接的に表すなど抑制も効いているので、押し付けがましさもありません。他にも「a late bloomer」は初期のゲームで雪歩が大器晩成型であったことから来ているのだろうとか、「季節は巡る」だったり「いつかは儚く散りゆく」という言葉には声優交代に対する含みが入ってるのかとか、山本氏の言葉通り表面的には分からないものを含め細かい仕込みが色々あるのでしょう。

 

個人的には雪歩のプロデューサーということでやっているので、山本氏の思いの強さがどっちに出るか不安だったところもあるのですが、これは良い方に出たと思うので何よりもまず安心しました。ただ何回も聴いた今でも若干身構えてしまうところはまだあるので、完全フラットに聴けるのはもう少し先かも。

 

 

・『SPIRIT』 (オリジナル・アーティスト:PAMELAH

・『桜見丘』 (オリジナル・アーティスト:Local Bus

 

 浅倉さんが「YESのイイコは卒業しよう」という言葉を雪歩に言わせたくて選曲したのが『SPIRIT』、原曲が好きで「雪歩に失恋曲を歌ってほしい」というリクエストが多かったということで選曲したのが『桜見丘』。

 

この2曲は音の質感に注目すると面白くて、まず『SPIRIT』は浅倉さんが語るようにアイマス初期の時代感を感じさせる楽曲で、それを今の雪歩が歌っていることを考えることで味わい深さが増すと思います。『桜見丘』はMA3の『Kosoms,Cosmos』で完成した浮遊感のある非常に心地よいボーカルが、また違ったバラードという形で再び聴けたのが嬉しい。個人的には1番好み。

 

 

・『マジで…!?』

 

千早同様、雪歩の『マジで...!?』も基本かわいい中に程よく遊びもあってバランスが良い。一番の見せ場である「マジでヤバイ!」のキメは、基本語尾の下がるダウナー系なのですが、それがだんだんとカッコ良さが増していき、最後にはドヤ感さえ漂わせているところが面白い。その他にも「ぎゅっと握り」の部分で「きゅっと」(ゲームにおける雪歩特有のモーション)してる感じを出していたりと、想像以上の遊びを見せてくれているのが嬉しい。

 

 

・『New Me, Continued』

 

あえてキャラクター性を抑えて歌うこの曲では、全体的に大人びて感じることが多いのですが、それは雪歩に関しても例外ではありません。非常に落ち着いていて、かといってエモに振れるわけでもなく、ディレクションの狙い通り「素」の雪歩が感じられる歌唱になっています。それもあってか、雪歩らしい吐息もここではセクシーさが混じります。

 

 

トークパート

 

今回の雪歩は驚くほどトークが上手いです。エピソードトーク稲川淳二ばりで、側から見たら非常に小さい出来事を臨場感たっぷりに語るので、内容もさることながら語り口のシリアスさにとても笑えます。その一方で、締めには新曲に絡めたエモい話を披露し、それ自体も気が利いてて良いんですが、ここでも話し方のちょっとしたリズムや抑揚がとても心地よく耳に入ってきます。こういうキャラクターのトークパートで「トークが上手い」と感じるとは夢にも思っていなかったので、これは嬉しい誤算でした。

 

 

 

12  水瀬伊織


 

 

・『ソナー』 作詞・作曲・編曲:BNSI(岡田祥)

 

前回MA3の昭和アイドルど真ん中な『全力アイドル』から一転、今回は流行ど真ん中・ボカロ経由の最新オシャレポップスに挑戦するというのがまず面白い。歌詞もしっかりトレンドを抑えた感傷的で「考察」しがいのあるものになっています。歌詞の内容についてですが、釘宮さんが言っていた「反抗期」というのがまさに的を射ていると思います。子供から大人へ変化する過程で生じる未来への不安、そしてその感情をを自分もうまく整理できない苛立ち、その先を知りたいし知りたくない。そんな状態の中、手探りで進んでいく様を「ソナー」に例えて描いていると考えると理解しやすいかと思います。そう考えれば15歳という伊織の年齢感にもしっくりきますし、これまでアイドル全開な曲が多かった伊織としては意外と新境地と言えるかもしれません。

 

ちなみに釘宮さん曰く「爆エモい」歌唱をしたかったが、抑えようとするプロデューサー陣とのせめぎ合いがあったそう。確かにあまり「爆エモい」方向に行くとこの手の曲のパロディに聴こえてしまう危険がある気がするので、曲単体の完成度を考えれば今の抑えた歌唱で正解だったと思います。個人的にはおそらく「爆エモい」バージョンの方が好みだった気がしますが。最後に、次のソロがあるならば釘宮さんの言うようなもっと泥臭く『I Want』 ばりのハードな路線も聴いてみたいです。

 

 

・『やさしい気持ち』 (オリジナル・アーティスト:Chara

・『あたしを彼女にしたいなら』 (オリジナル・アーティスト:コレサワ

  

全部良いことで知られる伊織のカバー曲ですが、当然今回も全部良かったです。まず脳がとろけるとはまさにこのこと、爆甘いウィスパーボイスが炸裂するのが『やさしい気持ち』。その声の甘さに気を取られて最初は気づきませんが、歌詞も大概あまあまなので聴けば聴くほど何も考えられなくなっていきます。

 

『あたしを彼女にしたいなら』はワガママさと冷静さと甘さが同居した、まさに伊織な一曲。注目は歌詞の「身長は152cm」という部分が伊織に合わせて「153cm」に変更して歌唱している点。過去にデレステで『行くぜっ!怪盗少女』『HOT LIMIT』のカバーがされた際に人名やユニット名を変更するというのはありましたが、身長1cmだけというと手間の割に派手さはなく、逆に選曲への強い意志を感じさせます。個人的には自分がカバーリクエストで送った堀江由衣『半永久的に愛してよ』とほぼほぼ同じことを歌っている曲だったので、当然気に入りましたし、ニアピン賞を当てたようでちょっと嬉しかったです。

 

 

・『マジで…!?』

 

シリアス寄りの『ソナー』から甘さたっぷりのカバー2曲ときて、この『マジで…!?』では一転、子供っぽさを全開にした元気なボーカルが楽しめます。今回で全アイドル分のバージョンが出揃いましたが、伊織が一番楽しそうに歌っているかもしれません。これを楽しそうに歌っている伊織を想像するとたいへん微笑ましい。

 

 

 

・『New Me, Continued』

 

子供っぽさ全開の『マジで…!?』の次は、この曲で他のキャラクター同様大人っぽさを見せるのかと思いきや、伊織はやはり変わらぬミルキーボイスでした。例に漏れず釘宮さんも「こんなの伊織じゃない!」と思うほど削ぎ落としたディレクションを受けたようですが(出来上がったものを聴いたらちゃんと伊織で驚いたそう)、逆にそのキャラクターらしさを定義しているのはボーカルのどの部分なのかを考えるのも、この曲の楽しみ方のひとつかもしれません。

 

 

トークパート

 

自己肯定感MAXで突き進む伊織の1人喋りは、思いのほか今の時代のトレンドにもフィットしていて、生意気さよりもむしろエンパワメント性を感じさせます。自分の見たいように(伊織を)見ても構わない、なぜならどこから見ても可愛いからと断言する伊織の姿勢は、どうしても煮詰まったPの多い今の765ASの状況を考えると非常に頼もしく感じます。

 

 

 

13  双海真美

 

 

・『セクシータイフーン』 作詞:磯谷佳江 作曲:BNSI(工藤祐介) 編曲:玉木千尋

 

 「怪しくて、セクシーで、昭和のノリを感じさせるようなアニソン」という下田さんのリクエストを100%実現してできたのがこの曲(しかし作曲の工藤氏は平成生まれだそう)。これまでの真美のイメージをさらに拡大して、バカ方向に振り切っていて面白すぎる。曲調だけでなく、歌詞で展開されるセクシーイメージも大概昭和で「お色気ポーズ」だの「ノーサツ」だの、極め付きは「ボンキュッボン!いぇい!」とかいう頭の悪いフレーズがサビで繰り出されて最高。しかも歌詞カードを見ると「Born!Cute!Bomb!いぇい!」と謎の言葉遊びが楽しめます。

 

もちろん真美なので歌の中にも細かい遊びはいっぱいあります。はっきり「せくちー」と発音している箇所があったり、感想で「うふ〜ん♡」「いや〜ん♡」「こっちこっち〜♡」などのこれまた昭和なお色気表現を堂々と連発されるので笑わずに入られません。これまで真美は亜美よりもちょっと大人の大人の扉を開いていルような、思春期なりかけみたいなイメージの曲が多かったのですが、今回のMA4に関しては「亜美を経ての2回目だからもっと盛っていこう」という下田さんのサービス精神もあるでしょうが、応援歌である亜美の『ポジティブシンカー!』の方がハッキリ大人に感じます。

 

 

・『新宝島 (オリジナル・アーティスト:サカナクション

・『女々しくて』 (オリジナル・アーティスト:ゴールデンボンバー

  

「変わるもの、変わらないもの」というMA4のテーマに沿って選ばれたのが、真美が歌うイメージが全く湧かないということであえて選ばれた『新宝島』、これまで通りいくらでも遊べる『女々しくて』の2曲。

 

亜美も真美も、元気で遊びのある歌か逆にしっとり可愛い歌のどちらかが多いですが、この『新宝島』ではそのどちらでもない落ち着いたクールな歌が特徴的。真美に関しては『Mew Me, Continued』よりもこの曲の方が素な印象かんじます。そして面白くならないわけがない『女々しくて』では、鬼龍院翔に対抗するねちっこさ満点の歌唱を披露したり、たまに「女々ちくて」になっていたり、伊織に続き間奏のラップパートのギターソロを「双海亜美!」に、「ゴールデンボンバー!」の掛け声を「アイドルマスター!」に変えるなど、(「765プロ!」とかではなく、キャラクターが普通言わない「アイドルマスター」であることも含め)カバーのトリにふさわしいやりたい放題さを見せてくれます。

 

 

・『マジで…!?』

 

亜美の『マジで…!?』が期待通りのやりたい放題さを見せてくれた時点で、気になるのが「それでは真美はどうなっているのか?」というところですが、第一声からしっかり「あっ、これは真美だ」と思わせてくれます。亜美に続いて実質2週目にもかかわらず、豊富なバリエーションの歌い方を披露してくれますし、何より一時「おもしろ『マジで…!?』選手権」と化したこの曲のラストで、これまでの流れをひっくり返す「マジでヤバイ!」を披露しオチをつけてくるあたりさすがの仕事。

 

 

・『New Me, Continued』

 

亜美と真美が個別にCDを出すようになってから、共通曲でそれぞれのバージョンが存在することも増えました(私が確認できた範囲だと『MEGARE!』『ONLY MY NOTE』は歌い分けあり、『shy→shining』は歌自体は同じで終盤の台詞だけ変わっている感じでした)。とはいえこれまではよく聴き込んだり波形を比較したりしないと分からないぐらいの違いだったので、曲の特性もるかもしれませんが、一聴してすぐ分かるほどハッキリ歌い分けられているのは今回が初でしょう。(ちなみに収録は同日に2人分撮ったそうです)

 

この曲に関しては亜美のバージョンが印象的で(詳しくは第2弾のレビューにて)、真美も基本的には同じ方向性のですが、亜美よりもいくらかストレートな歌い方になっています。亜美が天真爛漫な子供っぽさをたたえていたぶん、真美がストレートに歌うことで相対的に大人っぽく=真美らしくちゃんと聴こえるというのが面白いところ。

 

 

トークパート

 

真美の趣味にある「ぼんさい」について、1トラック分エピソードが語られるのが聞きどころ。ネタではなく本当に盆栽を育てているのはゲーム中でたまに語られていましたが(「ボンノスケ」はミリシタのコミュで先に登場済み。「ボンソワール」はおそらく初出)、ここまでしっかり語られるとそれはそれで何なんだと思います。そして、千早のSNS話同様、真美もYoutubeの動画文化について語っていたり「配信に出た」と話すなど、現実とリンクする話題を積極的に出しているあたりも楽しいところ。

 

 

コロムビアミュージックショップ限定の特装版に付いてくる『The Remixes Collection THE IDOLM@STER TO D@NCE TO !! Vol.4』もラストということで田中秀和[MONACA]、佐藤貴文、TAKU INOUE、LindaAI-CUEとおなじみのメンツが揃った豪華盤。感動はそのままにしっかり踊れるMIXになった『約束 -Hidekazu Tanaka Remix-』、なんでメタルなのか全く意味が分からないがカッコいい『何度も言えるよ -Takafumi Sato Remix-』、ディスコから現代のクラブへと変貌した『MUSIC♪ -TAKU INOUE Remix-』、なんでもアリのおとはじ2000『おとなのはじまり -LindaAI-CUE Remix-』と、個性が爆発したとても楽しい仕上がりになっています。

 

 


 

 今回で全員分のMA4が出揃ったということで改めて振り返ってみると、最初こそ「心意気は汲むけど、もう少し新しいものが見たいなあ…」などと思っていましたが、弾を重ねるごとに毎回しっかり考えて作っているのが分かる内容で、キャラの個性が過去最高クラスに立っているので聴き比べも楽しく、翻って序盤の評価も高まったり、聴けば聴くほど味が出る良いシリーズになったと思います。

 

最近のアイマスの流れとして、多くのキャラにスポットを当てるためであったり、様々な展開をしやすくするためであったりで、どうしてもユニット単位での展開が主となってしまっています。その中で、このようにアイドルひとりひとりにスポットを当ててじっくり掘り下げていけるというのは、現状765ASの規模感でしかできないことと言えるでしょう。

 

そして、ここまで非常に膨大かつ多様な楽曲を歌いこなしてきてもなお、まだ新たな表現を見せてくれるキャストのチャレンジ精神には敬服するばかりです。15年の時を経てマンネリ化するどころか表現の幅が広がる一方で、特に歌声の実在感は今回皆トップクラスに高かったと思います。ここまで止まらずに走ってきた時間と経験の濃度が、765の強みとして今回ハッキリ出ていたと思います。

 

またゲームの展開に寄らず、アイマスシリーズにおける765ASの立ち位置や、キャストの意向、あるいは現実の社会に根ざした表現ができたのも面白いところだったと思います。キャスト主導でカバー選曲や新曲のコンセプトを決めたり、コロナ禍に寄り添ったような新曲があったり、楽曲と現実との距離が非常に近かったです。配信などでMR的な表現が見れることが増えてきたことなども合わせて、アイマスの次のステップとしての「より深い現実への侵食」に対する期待がより高まりました。それに関連してミリオンの「劇場」の存在に言及するというのも、実際の「765AS」としての立ち位置を踏まえた上で改めてスタートラインを引くという意味で、理にかなっているし必要だったと思います。(重要なのはこの13人で動ける場があることであって、正史も何も無いアイマスで「世界線」を気にするのは意味がないと思います)

 

今回のMA4は「再出発に当たっての決意表明」という意味合いが強いのは、「変わるもの、変わらないもの」というテーマやそれに根ざした『New Me, Continued』からも分かります。765単独としての展開を止めないということは事あるごとに言われていますし、今回のMA4で改めて良いスタートが切れたと思いますし、新しい展開が形になるのを楽しみに待ちたいと思います。(最近はずっと765でアコースティックライブやればいいのにと思っています)

 

 

それではこの辺で。

 

消灯ですよ。